1. 研究科の概要

1) 1年をふりかえって
社会文化科学研究科長   三浦 佑之
 青天の霹靂とでも言うしかないが、思いがけず社会文化科学研究科の科長になって一年が過ぎた。戸惑ってばかりいて何もできなかったという印象だけが残る。
 正直にいえば、科長に就くまでは、社文研の運営や教育について、あまり熱心ではなかった。どうしても学部に基盤があり、何事も学部のほうから考えるというくせがついているからである。決していい加減に考えていたわけではないが、社文研という部局に対する帰属意識が希薄だったという点は否定できない。
 この帰属意識の希薄さというのは、私にかぎらず多くの教員に当てはまるのではないかと思う。たとえば、自分の所属する専攻名・講座名・教育研究分野名がすらすらと出てくる方がどれほどいるだろうか。学部についていえば、自分の所属する学科名・講座名が出てこない教員などひとりもいないはずである。おそらくその差異が、社文研に対する帰属意識の希薄さということにつながっているのだと思う。なぜそのようなことになるかといえば、専任教員が助手4名しかいないというところに起因するだろう。
 10年目を迎え、100名を越す在学生を抱えるようになった社文研としては、文学部および法経学部から一定数の教員を移行して、社文研の専任にするといった抜本的な改革はぜひとも必要なことではないかと考える。もちろん、社文研の専任になったからといって、学部教育や普遍教育を担当しなくていいということはないから、かえって負担が大きくなるという危惧もないわけではないが、研究体制や研究科の運営が専任を中心にして行われることによって、教育研究を活性化することも可能になるはずだ。その場合に、専任教員を固定するのではなく、期限を決めて交代してゆくというような方法も考えなければならないだろう。というようなことは、改組を検討する将来構想の場でさまざまに話し合われてきたことである。
 一年間全体を振り返ると、2003年度は、国立大学法人となるためのさまざまな準備に追われた一年であったということができるだろう。千葉大学が、社会文化科学研究科がどのように変わってゆくか、流動的な部分は大きいが、法人化後の千葉大学を、社会文化科学研究科を活気のある研究の場にするために努力しなければならない。
 しばらくの間は、法人化や改組計画などがあって、教員も院生も落ち着かない日々かと想像されるが、我々が第一に果たさなければならないのは、教育と研究であるということだけは忘れないでいたい。とくに院生たちには、周囲の雑音に惑わされず、充実した研究成果をあげてほしいと願っている。

2) 年間主要事業
平成15(2003)年度
4月11日(金) 大学院入学式およびガイダンス
4月16日(水) 第1回運営委員会
5月21日(水) 第1回研究科委員会
6月18日(水) 第2回運営委員会
7月16日(水) 第2回研究科委員会
9月17日(水) 第3回研究科委員会
9月24日(水)〜26日(金) 前期全体研究会
9月30日(火) 前期修了者学位記授与式
10月15日(水)第3回運営委員会 
11月15日(土)第1回「ききみみ広場」開催
11月19日(水)第4回研究科委員会
12月12日(金)〜13日(土)
  千葉大学国際会議「東欧社会主義の遺産とグローバリゼーション」開催
12月13日(土)第2回「ききみみ広場」開催
12月17日(水)第4回運営委員会
平成16(2004)年
1月21日(水)第5回研究科委員会
1月24日(土)第3回「ききみみ広場」開催
2月1日(金) 紀要『社会文化科学研究』第8号刊行
2月18日(水)入学試験
2月18日(水)〜19日(木) 千葉大学国際会議「地球公共平和と戦争」開催
3月4日(木)第6回研究科委員会
3月15日(月)〜17日(水)後期全体研究会
3月25日(木)後期修了者学位記授与式
3) 平成15年度新入生
■日本研究専攻
学籍番号
氏   名
指導教官(左欄教官が主任)
03QD1001 エレナ・パンチェワ 松本 泰丈 中川 裕 村岡 英裕
03QD1002 王 書 滝藤 満義 高木 元 西村 靖敬
03QD1003 烏日図那蘇図 荻原 眞子 中川 裕 三浦 佑之
03QD1004 呉 志剛 中川 裕 松本 泰丈 村岡 英裕
03QD1005 下地 賀代子 松本 泰丈 中川 裕 村岡 英裕
03QD1006 鈴木 真澄 半田 吉信 鎌野 邦樹 小賀野晶一
03QD1007 エカテリーナ・スラビンスカヤ 秋元 英一 雨宮 昭彦 古内 博行
03QD1008 高橋 孝次 滝藤 満義 橋本 裕之 水上 藤悦
03QD1009 西田 一豊 滝藤 満義 三浦 佑之 秋山 和夫
03QD1010 符 衛民 岩間 昭道 鈴木 庸夫 多賀谷一照
03QD1011 松浦 真衣子 趙 景達 小澤 弘明 栗田 禎子
03QD1012 ムジュムダール・アシュトシ・プラカッシュ 長田 謙一 三宅 明正 池田 忍
03QD1013 李 林静 中川 裕 荻原 眞子 山田 賢
03QD1014 冷 羅生 岩間 昭道 嶋津 格 坂本 忠久
■都市研究専攻
学籍番号
氏 名
指導教官(左欄教官が主任)
03QD2001 青山拓央 永井 均 高橋久一郎 忽那 敬三
03QD2002 井上 猛継 金子 文洋 榊原 健一 小野 理恵
03QD2003 岩佐 光弘 武井 秀夫 鈴木 紀 飯田 亘之
03QD2004 吉良 智子 池田 忍 三宅 晶子 安田 浩
03QD2005 高 桂月 廣井 良典 安孫子誠男 倉阪 秀史
03QD2006 小島 茂 金子 文洋 榊原 健一 小野 理恵
03QD2007 清水 将吾 永井 均 高橋久一郎 忽那 敬三
03QD2008 陳 金霞 廣井 良典 安孫子誠男 倉阪 秀史
03QD2009 冨安 昭彦 三宅 晶子 池田 忍 長田 謙一
03QD2010 エカテリーナ・ベリアエバ 御子柴道夫 池田 忍 荻原 眞子
03QD2011 森 佳三 長田 謙一 池田 忍 西村 靖敬
4) 学位取得者
■前期修了者
氏 名
論         題
取得学位
大島 丈志 「宮澤賢治」における共存への実践と創造−童話・童謡運動から農山漁村更正運動への推移を軸として− 博士(文学)
笹本 明子 近代日本の「手芸」とジェンダー−女性の階層構造と「婦徳」の伝播− 博士(文学)
■後期修了者
氏 名
論         題
取得学位
吉橋 弘行 プロハースカ・オットカールの「反革命」思想−19〜20世紀の転換期ハンガリーにおける「新保守主義」を通した再考察− 博士(文学)
市川 紀子 米国における財務会計の現代的特質−FASB『討議資料』および概念的フレームワークにおける中心観を軸として− 博士(経済学)
リサ・フェアブラザー 接触場面と外来性−日本語母語話者のインターアクション管理の観点から− 博士(学術)
秋山 晋吾 18世紀および19世紀前半のデブレツェンにおける「市民」の範疇−葡萄酒販売権問題とハンガリー大平原の都市社会− 博士(文学)
小野 正芳 包括利益の理論的基礎と財務報告への影響 博士(経済学)
姜 臣 韓国の分譲集合住宅の建替え及びリモデリング制度に関する民事法的考察 博士(法学)
■論文提出による学位取得者
氏 名
論         題
取得学位
和泉 広恵 家族の語り−里親養育からみる現代の親子・家族関係 博士(学術)
5) 教官の異動
【退官】
<平成15年3月付>
日本研究専攻
坂野 潤治 教授(定年)日本社会論講座
葉山 滉  教授(辞職)国際比較論講座

都市研究専攻
奥村 隆  教授(辞職)現代都市論講座
鈴木 春男 教授(定年)現代都市論講座
大室 幹雄 教授(定年)現代都市論講座
小川 有美助教授(辞職)社会変動論講座

【着任】
<平成15年4月付>
日本研究専攻
時實 早苗 教授 言語文化論
保坂 高殿 助教授 比較宗教文化論

都市研究専攻
小賀野 晶一 教授 都市生活法論
宗宮 好和 教授 都市言語情報論
小野 理恵 助教授 ゲーム論

<平成15年10月付>
日本研究専攻
植木 哲 教授 民事制度医事法制論
栗田 誠 教授 比較経済法論
土田知則 助教授 言語文化批評論
山口 元 助教授 民衆演劇論

都市研究専攻
米村 千代 助教授 家族変動論
水島治郎 助教授 ヨーロッパ都市農村関係論

2. 研究科委員会

平成15年度第1回社会文化科学研究科委員会
1 日時 平成15年5月21日(水)16時10分〜
2 場所 総合研究棟2階マルチメディア会議室
議 題
(1)学生の除籍について
(2)学生の休学について
(3)指導教員の変更について
(4)研究科長職務代行者の指名について
(5)その他
報告事項
(1)学生の指導教員について
(2)年次研究計画書等について
(3)平成16年度概算要求について 
(4)中期目標・中期計画(ver.5)について
(5)平成15年度研究プロジェクトについて
(6)社会文化科学研究科授業科目担当教員の補充手続きについて
(7)平成15年度前期全体研究会日程について
(8)社会文化科学研究科ホームページについて
(9)新入生アンケート結果について
(10)学長と院生との懇談会の参加者の推薦について
(11)平成15年度会議予定表について
(12)学内各種委員会委員について
(13)研究科内委員会委員について
(14)外部評価・自己点検評価報告書について
(15)その他

平成15年度第2回社会文化科学研究科委員会
1 日時 平成15年7月16日(水)16時10分〜
2 場所 総合研究棟2階マルチメディア会議室
議 題
(1)担当教員の補充について 
(2)平成15年度学位請求論文(課程博士)審査結果報告及び合否について
(3)平成15年度学位請求論文(論文博士)審査結果報告及び合否について
(4)学生の休学について
(5)学位請求論文の「旧姓」併記について
(6)北方民族大学との部局間交流協定の提案について
(7)国立ロシア人文大学との部局間交流協定の提案について
(8)平成15年度当初予算配分(案)について
(9)その他
報告事項
(1)平成15年度前期全体研究会について 
(2)その他

平成15年度第3回社会文化科学研究科委員会
1 日時 平成15年9月17日(水)16時10分〜
2 場所 総合研究棟2階マルチメディア会議室
議 題
(1)日本研究専攻日本社会論講座日本法政治体制論民事制度・医事法制論の人事選考ついて
(報告・採決)
(2)日本研究専攻国際比較論講座比較政策論比較経済法論の人事選考について
(報告・採決)
(3)日本研究専攻国際比較論講座比較文化論言語文化批評論の人事選考について
(報告・採決)
(4)日本研究専攻国際比較論講座比較文化論民衆演劇論の人事選考について
(報告・採決)
(5)都市研究専攻社会変動論講座社会構造論家族変動論の人事選考について
(報告・採決)
(6)都市研究専攻社会変動論講座地域社会形成論ヨーロッパ都市・農村関係論の人事選考につ
いて
(報告・採決)
(7)千葉大学大学院社会文化科学研究科規程の一部改正(案)について
(8)学生の休学について
(9)学生の休学期間延長について
(10)学生の復学について
(11)平成15年度9月論文提出予定者に係る学位請求論文提出資格確認について
(12)平成16年度学生募集要項(案)及び進学者選考要項(案)について
(13)全北大学との大学間交流協定の提案について
(14)その他
報告事項
(1)平成15年度前期修了者の学位記授与式について
(2)中期目標・中期計画について
(3)平成15年度前期全体研究会について
(4)その他


平成15年度第4回社会文化科学研究科委員会
1 日時 平成15年11月19日(水)16時10分〜
2 場所 総合研究棟2階マルチメディア会議室
議 題
(1)平成16年2月論文提出予定者に係る学位請求論文提出資格確認について
(2)2003年度後期全体研究会(2004年3月中旬)の改定案について
(3)その他
報告事項
(1)第51回六大学法文系学部長会議について
(2)その他

平成15年度第5回社会文化科学研究科委員会
1 日時 平成16年1月21日(水)16時10分〜
2 場所 総合研究棟2階マルチメディア会議室
議題
(1)授業科目の変更について
(2)担当教員の補充について
(3)指導教員の変更について
(4)平成15年度学位請求論文(課程博士)審査報告及び合否について
(5)平成15年度学位請求論文(論文博士)審査報告及び合否について
(6)平成15年度2月論文提出予定者に係る学位請求論文提出資格確認について
(7)平成16年度入学試験書面審査委員及び口述試験委員について
(8)その他
報告事項
(1)全体研究会のプログラム及び司会について
(2)その他

平成15年度第6回社会文化科学研究科委員会
1 日時 平成16年3月4日(木)14時〜
2 場所 総合研究棟2階マルチメディア会議室
議題
(1)平成16年度社会文化科学研究科入学試験合否判定について
(2)日本研究専攻日本社会論講座日本法政治体制論の人事選考について
(報告・採決)
(3)都市研究専攻社会変動論講座社会構造論の人事選考について(報告・採決)
(4)専攻長の決定について
(5)千葉大学大学院社会文化科学研究科規程(案)等の制定について
(6)学生の休学について
(7)学生の休学期間延長について
(8)学生の復学について
(9)学生の退学について
(10)指導教員の変更について
(11)学位請求論文審査委員会(課程博士)の設置について
(12)法人化に伴う予算執行システムについて
(13) その他
報告事項
(1)平成15年度社会文化科学研究科予算について
(2)平成16年度「21世紀COEプログラム」申請について
(3)平成15年度社会文化科学研究科年報について
(4)平成16年度リサーチ・アシスタント募集結果について
(5)学業成績優秀者に係る学長表彰候補者について
(6)学位記受領代表者について
(7)大学院修了式、学位記伝達式及び祝賀会について
(8)大学院入学式及び新入生ガイダンスについて
(9)千葉大学社会文化科学研究科国際シンポジウムについて
(10)その他

3. 運営委員会

平成15年度第1回社会文化科学研究科運営委員会
1.日時 平成15年4月16日(水)14時30分〜
2.場所 総合研究棟マルチメディア会議室
議 題
(1)学生の退学について     
(2)学生の休学について      
(3)学生の休学期間延長について
(4)学生の復学について
(5)長期履修学生の認定について
(6)平成16年度概算要求について
(7)学内各種委員会委員について
(8)研究科内委員について
(9)その他
報告事項
(1)2003年度「全体研究会」日程について
(2)平成15年度入学状況について
(3)社会文化科学研究科授業科目担当者の補充について 
(4)平成15年度会議日程について
(5)社会文化科学研究科予算執行について
(6)その他

平成15年度第2回社会文化科学研究科運営委員会
1.日時 平成15年6月18日(水)14時30分〜
2.場所 総合研究棟マルチメディア会議室
議 題
(1)平成15年9月論文提出予定者の資格認定について     
(2)学位請求論文審査委員会委員(論文博士)について      
(3)授業科目の変更について
(4)教員の海外渡航について
(5)社会文化科学研究科と自然科学研究科との文理融合に関する検討委員会の設置について
(6)その他
報告事項
(1)平成15年度前期全体研究会について
(2)TA登録状況ついて
(3)RA採用状況について
(4)学位請求論文の「旧姓」併記について
(5)その他


平成15年度第3回社会文化科学研究科運営委員会
1.日時 平成15年10月15日(水)14時30分〜
2.場所 総合研究棟マルチメディア会議室
議 題
(1)学生の休学について
(2)学生の休学期間延長について
(3)学生の復学について
(4)学生の退学について
(5)平成15年度9月論文提出者に係る学位請求論文審査委員会(課程博士)の設置について
(6)その他

平成15年度第4回社会文化科学研究科運営委員会
1.日時 平成15年12月17日(水)14時30分〜
2.場所 総合研究棟マルチメディア会議室
議 題
(1)平成16年度授業日程(案)について
(2)平成16年度ガイダンス日程(案)について
(3)平成15年度2月論文提出予定者に係る学位請求論文提出資格確認及び取消しについて
(4)平成16年度長期履修学生制度の手続きについて
(5)平成16年度入学試験実施要領(案)について
(6)GPA制度の導入に関する取扱いについて
(7)授業科目の変更について
(8)その他
報告事項
(1)平成16年度入学試験出願資格認定審査結果について
(2)平成15年度(1月〜3月)会議日程について
(3)その他

4. 入試委員会

1)委員会の構成
平成16(2003)年度の入学試験委員は、以下の通りである。
委員長:中原秀登
滝藤満義(前委員長)、半田吉信、橋本裕之、石田憲、飯田恒之、水上藤悦、木村琢磨、御子柴道夫、三宅晶子、天野昌功、廣井良典、榊原健一

2)2004年度(平成16年度)入学試験の日程
出願期間:平成16年1月13日(火)〜1月15日(木)
平成16年度学生募集要項に記載された出願資格(4)または(5)により出願を希望する者の認定申請期間は、平成15年12月1日(月)〜12月3日(水)
出願認定資格:申請者3名、出願資格認定2名
出願者数:日本研究専攻34名
都市研究専攻19名
合計53名
口述試験:平成16年2月18日(水)
合格発表:平成16年3月12日(金)
合格者数:日本研究専攻16名
都市研究専攻9名
合計25名
入学手続き期間:平成16年3月24日〜25日
 今年度は、前年度からの懸案事項であった採点基準の見直しについて改善を行ったことから、多少の改善が図られた。なお、今年度においては、出願資格認定の提出書類の記載をさらに充実させるなどの若干の課題が残された。

5. 学務委員会

1)委員会の構成
2003(平成15)年度の学務委員会の構成は以下の通りである。
委員長:桜井 厚
研究科長:三浦 佑之
専攻長:高橋 久一郎(日本研究)、野村 芳正(都市研究)
委員:鈴木 庸夫(前委員長)、長田 謙一、御子柴 道夫、井上 孝夫
社文研助手:長谷川 秀樹、高光 佳絵

2)2003年度(平成15年度)の委員会日程と議事項目
第1回 日時:平成15年4月16日(水) 10時30分から
議 題
(1)平成15年度学務委員会委員長の選出について
(2)学生の退学について
(3)学生の休学について
(4)学生の休学期間延長について
(5)学生の復学について
(6)長期履修学生の認定について
(7)特別研究Jの単位認定について
(8)全体研究会について
(9)その他
報 告
平成15年度入学状況について

第2回 日時:平成15年5月12日(月) 10時30分から
議 題
(1)学生の除籍について
(2)学生の休学について
(3)特別研究Jの単位認定について
(4)学生の指導教員について
(5)指導教員の変更について
(6)年次計画・長期計画書等について
(7)その他
報告
(1)新入生アンケート結果について 

第3回 日時:平成15年6月9日(月) 10時30分から
議 題
(1)特別研究Jの単位認定について
(2)平成15年9月論文提出予定者の資格確認について
(3)学位請求論文審査委員会委員(論文博士)について
(4)社会文化科学研究科(博士課程)院生の旧姓使用について
(5)9月開催の全体研究会について
(6)その他

第4回 日時:平成15年7月7日 10時30分から
議 題
(1)平成15年度学位請求論文(課程博士)審査結果報告及び合否について
(2)平成15年度学位請求論文(論文博士)審査結果報告及び合否について
(3)学生の休学について
(4)学位請求論文の「旧姓」併記について(案)
(5)博論の言語について
(6)その他

第5回 日時:平成15年9月9日(火) 13時00分から
議 題
(1)学生の休学について
(2)学生の休学期間延長について
(3)学生の復学について
(4)平成15年度9月論文提出予定者に係わる学位請求論文提出資格確認について
(5)特別研究J(2単位)単位認定について
(6)その他
報 告
(1)前期修了式について(9月30日火12時から 研究科長室)

第6回 日時:平成15年10月6日(月) 10時30分から
議 題
(1)学生の休学について
(2)学生の休学期間延長について
(3)学生の復学について
(4)学生の退学について
(5)平成15年度9月論文提出者に係わる学位請求論文審査委員会(課程博士)の設置について
(6)指導教員の変更について
(7)その他

第7回 日時:平成15年11月10日(月) 10時30分から
議 題
(1)平成16年2月論文提出予定者に係わる学位請求論文提出資格確認について
(2)特別研究Jの単位認定について
(3)2003年後期全体研究会(3月中旬)の改革案について
(4)その他
報 告
(1)平成15年度9月論文提出者に係わる学位請求論文審査委員会(課程博士)について

第8回 日時:平成15年12月8日(月) 10時30分から
議 題
(1)平成16年度授業日程(案)について
(2)平成16年度ガイダンス日程(案)について
(3)平成15年度2月論文提出予定者(課程博士)の資格確認と取り消しについて
(4)長期履修学生制度について
(5)GPA制度の導入に関する取り扱いについて
(6)その他

第9回 日時:平成16年1月13日(火) 10時00分から
議 題
(1)指導教員の変更について
(2)平成15年度学位請求論文(課程博士)審査報告及び合否について
(3)平成15年度学位請求論文(論文博士)審査報告及び合否について
(4)平成15年度9月学位請求論文提出者の論文の取り下げについて
(5)平成15年度2月論文提出予定者に係わる学位請求論文提出資格確認について
(6)その他

第10回 日時:平成15年2月25日(火) 18時00分から
議 題
(1)学生の休学について
(2)学生の休学期間の延長について
(3)学生の復学について
(4)学生の退学について
(5)指導教員の変更について
(6)学位請求論文審査委員会(課程博士)の設置について
(7)その他
報 告
(1)学長表彰候補者について
(2)学位記受領代表者について

6. 各種作業部会・委員会

1.国際化作業部会
1)第1作業部会の構成
平成15(2003)年度の国際化第1作業部会委員は以下の通りである。
委員長:南塚信吾
委員:岩田昌征、御子柴道夫、小澤弘明

2)2003年度(平成15年度)の第1作業部会日程と議事項目
第1回国際化第1作業部会
日時:平成15年7月8日 15:00から
議題:平成15年度第1回国際シンポジウムについて
1.タイトルについて
2. 開催期間および共催確認について
3.海外招聘講師候補の人選・プログラムについて
4.開催場所について
5. 予算について

3)第2作業部会の構成
平成15(2003)年度の国際化第2作業部会委員は以下の通りである。
委員長:嶋津格
委員:小林正弥、石田憲、水島治郎

4)2003年度(平成15年度)の第2作業部会日程と議事項目
第1回国際化作第2業部会
日時:平成15年12月25日 14:00から
議題:平成15年度第2回国際シンポジウムについて
1.タイトルについて
2. 開催期間および共催確認について
3.外国人招聘講師候補の人選・プログラムについて
4.開催場所について

第2回国際化第2作業部会
日時:平成16年1月8日 12:00から
議題:平成15年度第2回国際シンポジウムについて
1.ポスターおよび論文集の制作について
2. 宿泊・送迎の手配について
3.シンポジウム前日・当日の学生アルバイトについて

2.社会化作業部会
「大学と地域:地域のなかの大学」−伝承と子ども空間世界「ききみみ広場」の開催−

事業の経緯
 文学部日本文化学科および社文研日本研究では2001年から「子どもへの伝承」を課題として共同研究プロジェクト「ことばの復権−こども向けメディアの創造」を進め、2002年度末からはこれをさらに拡大発展させ、「『伝承』に関する学際的研究」(平成14年度「研究に関する重点事業」助成)としてより広範な視野と研究領域からのアプローチを試みる研究活動をおこなってきた。参加者は文学部、教育学部の教員、院生および社会人(卒業生)など十数人である。
 この研究の究極の目的は、大学における研究を如何に社会へ還元することができるかという実践的な課題を追求し、人文科学のあり方に何らかの示唆を得ることにある。社会のあらゆる営為の伝達・継承を「伝承」として捉えるなら、その研究には多くの学問領域にわたる真の「学際性」が求められることになり、また、それは独り大学ばかりでなく、地域社会の参与をも前提にしなければならない。
 2002年度には定期的な研究会で議論を重ねたが、研究課題としては長期的な取り組みが必要であるため、2003年度からは「研究プロジェクト」として研究継続することとした。このプロジェクトの一環として、研究課題の実践化を検討し、本研究科の社会化作業部会として地域の親子などを対象に「ききみみ広場」を開催することとした。

事業「ききみみ広場」について
企画担当:三浦佑之、久保勇、荻原眞子(社文研)、藤かおる(童話作家)、高森智子(読書指導員)
目的:「伝承」の実践として、「語られることば」を「聴く場」を子どもや若者に提供する。
対象:地域社会の子どもおよび一般の住人 
実践者:語り部、ストーリー・テラー(地域から招待)、その他
内容:「聴く」ことの対象は多様であり得る。昔話をはじめとし、国内、国外の多様なジャンルの口承文芸、学内のサークルからの参加をも視野に入れる。

開催期間:2003年11月〜2004年3月、月1回、もしくは2月に3回
開催場所:社文研新棟4階「日本文化芸能実習室」

3.紀要・年報編集委員会
1)平成15年度の紀要・年報編集委員
柳澤清一(編集委員長)

2)平成15年度の活動
 
平成15年度については紀要執筆・投稿規定等に特段の変更がなかったため、委員会は開催せず、執筆者の投稿資格および掲載の可否判断のみを持ち回りでおこなった。 
平成15年度は『社会文化科学研究』第8号の編集および刊行を下記のスケジュールにて行った。
平成15(2003)年
5月8日(木)院生、教官、修了者を対象に紀要の刊行を通知し、投稿申込受付
7月31日(水)投稿申込受付終了
10月1日(火)原稿受付終了、版下作成開始、校正作業
平成16(2004)年
2月1日(木)製本業者(勝美印刷株式会社)より納品。刊行
なお、平成15年度は、250部刊行し、執筆者には30部抜き刷りを作成した。
7. 研究プロジェクト

掲載頁がないプロジェクトについては年次報告を行わなかったチームである。頁数の代わりに付されている記号はその事由を意味する。
*印・・・プロジェクト研究報告書を刊行し、活動を終了したため、年次報告の必要がないプロジェクト
※印・・・所属院生の休学・退学に伴い、2003年度の活動を休止したプロジェクト
通し番号 年度番号 プロジェクト・チーム名 代表者名 その他の社文研教官・院生
18 03-01 言語の社会的費用 野村芳正 柿原和夫・松田忠三・林陽一・野田俊哉
59 03-02 33 医療システムの経済学的評価に関する研究 武蔵武彦 廣井良典・遠藤美光・平本行紀
64 03-03 法と道徳の相互浸透 嶋津 格 飯田亘之・高橋久一郎・渡辺康行・登尾 章・丸 祐一
73 03-04 市場と国家、そして市民社会−思想史的研究 野澤敏治 小林正弥・安孫子誠男・嶋津 格・一ノ瀬佳也
75 03-05 35 現代地方政治分析 宮崎隆次 大森 彌・小林正弥・光延忠彦
80 03-06 Anglo-saxon, Norse, and celtic Studies 小倉美知子 前田彰一・石井正人・大野顕子・山崎健一
81 03-07 35 男女雇用機会均等改善に関する比較法研究 手塚和彰 中窪裕也・金原恭子・村山眞維・鈴木庸夫・マリアシルビア・アロンソ
86 03-08 36 ユーラシア諸民族の叙事詩研究 荻原眞子 オルトナスト・朝 格査・丹菊逸治
87 03-09 「公共性」概念の検討−環境問題をめぐって 小林正弥 飯田亘之・高橋久一郎・鎌野邦樹・工藤秀明・吉永明弘
92 03-10 日中欧比較契約法 半田吉信 鎌野邦樹・渡辺康行・費 俊
94 03-11  37 語りと経験の変容 武井秀夫 鈴木明子・鈴木理恵・鈴木勝巳・間宮郁子・岩佐光弘
95 03-12 近代ヨーロッパ政治文化の研究(K) 南塚信吾 小澤弘明・御子柴道夫・吉橋弘行・秋山晋吾・崎山直樹(休学)
96 03-13 37 北方文化の中のアイヌ 荻原眞子 中川 裕・柳澤清一・北原次郎太・田村将人・丹菊逸治
97  03-14 記録史料に関する総合的研究(L) 菅原憲二 佐藤博信・宮崎隆次・坂本忠久・青木祐一・横山陽子・申秀逸(休学)
98 03-15 38 訪問歯科診療と高齢者のQOL向上の経済的評価 廣井良典 武蔵武彦・櫻井 厚・野村眞弓
100 03-16 20世紀文学・芸術・思想の諸問題とその位相 西村靖敬 前田彰一・三井吉俊・秋山和夫・三宅晶子・内村博信・清原正至・長谷川晶子・藤田淳子・須藤温子(休学)・大山麻稀子(休学)
101 03-17 39 主体概念の再検討 永井 均 高橋久一郎・飯田亘之・忽那敬三・嶋津 格・青山拓央・清水昭吾・尾形まり花・村上(谷田)綾・壁谷彰慶・吉永明弘・望月由紀・井上兼生(休学)
103 03-18 続々平家物語の成立 久保 勇
104 03-19 言語管理理論を中心とした接触場面の研究 村岡英裕 金子信子・武田(井出)加奈子・リサ・フェアブラザー
105 03-20 40 ロシアの民衆と文化 御子柴道夫 渡辺圭・新井正紀・大山麻稀子(休学)
106 03-21 41 亡命ロシア人を中心とした思想的系譜 御子柴道夫 エカテリーナ・ベリアエバ・渡辺圭・新井正紀・大山麻稀子(休学)
107 03-22 43 モダニズム研究−国際比較の観点から 前田彰一 西村靖敬・石井正人・南塚信吾・伊藤孝一郎・辛 大基・小林直樹
109 03-23 44 IT化の現状と雇用、職場関係の再構成 犬塚 先 江頭説子
110  03-24 44 文化における権力と抵抗の諸相 三宅晶子 前田彰一・西村靖敬・冨安昭彦・渡部周子・須藤温子(休学)
111 03-25 ナショナリズムとジェンダーに関する比較史的研究 栗田禎子 池田忍・小澤弘明・千代崎未央(休学)
112 03-26 46 脱工業化と都市の変容−国際比較 雨宮昭彦 渡部 薫
113 03-27 47 ユーラシア諸言語の動詞論(3) 中川 裕 李 林静・呉 志剛・長崎 郁・童 鳳環
114 03-28 48 フランコフォニー(仏語圏)研究 長谷川秀樹 古川和美(休学)
115 03-29 49 近代日本の女性美術家と女性像に関する研究 池田 忍 吉良智子・笹本明子
116 03-30 50 経済システム移行の比較研究 秋元英一 雨宮昭彦・古内博行・中窪裕也・エカテリーナ・スラビンスカヤ・折原淳一
117 03-31  52 現代高齢化社会における社会をめぐる諸問題 半田吉信 小賀野晶一・鎌野邦樹・鈴木真澄
118 03-32 53 日本と中国の法制度の比較研究 岩間昭道 鈴木庸夫・坂本忠久・嶋津 格・多賀谷一照・冷 羅生・符 衛民
119 03-33 54 金融数理の基礎教育課程の構築に関する研究 金子文洋 榊原健一・井上猛継・荒巻英司
120 03-34 55 日本近代文学と宗教 滝藤満義 王 書艪・高橋孝次・西田一豊・小嶋洋輔・大島丈志・黄育紅
121 03-35 56 現代中国の法変動と政策形成 湯本國穂 鎌野邦樹・顧 志雄
122  03-36 57 中国と日本の医療・社会保障システムの比較研究 廣井良典 高 桂月・陳 金霞
123 03-37 58 語彙と文法の相関−比較・対照研究の視点から 松本泰丈 下地賀代子・エレナ・パンチェワ・仲原 穣(休学)
124 03-38 60 東アジア(日本・中国・韓国)の土地・環境法制の比較研究 鎌野邦樹 竹田智志・ホビスハラト・カン・ヒョクシン・顧 志雄・松井美知子(休学)
125 03-39 60 「伝承」に関する学際的研究 荻原眞子 三浦佑之・中川 裕・櫻井 厚北原次郎太・田村将人・朝 格査・丹菊逸治・オルトナスト
126 03-40 61 複式簿記システムの展開と方向性 大塚成男 善積康夫・崔 鳳傑・市川紀子・小野正芳
127 03-41 62 戦争と表象 長田謙一 三宅晶子・池田 忍・森 佳三・ムジュムダル・アシュトシ・冨安昭彦・稲本竜太郎(休学)
128 03-42 63 土器型式論の実践的研究 岡本東三 柳澤清一・岩城克洋・松井 朗


03-01 医療システムの経済学的評価に関する研究

1)プロジェクトの内容

 このプロジェクトは、医療システムに対して、純粋経済学的アプローチにとどまらず、政治過程,生命倫理等、他分野との積極的学際的視点への配慮を付加していく事により、より重層的な考察を行っていくものである。
 医療システム分析の一分野である医療経済と呼ばれる領域には、国家レベルの医療政策から個々の診療行為まで、実に多くの問題を内包する。これらの問題全てが、その分類上、経済の要素に配慮しなければならない事象である事は否定出来ないが、その一方で、人間性に富んだより広い視野が要求されるものである。従来の研究においては、その事が強く意識されてはいるものの、このような要請に応じきれる成果が実現しているとは言い難い。このプロジェクトでは、以上の問題意識を研究主題に反映させ、医療経済学をより豊かな形で展開させていく事を目的とする。

2)研究の経過
 今年度は昨年度に引き続き、本プロジェクト参加者唯一の学生である平本行紀の研究の進展に重点がおかれた。
 これまで、医療サービスの供給主体の事業者団体に関する「組織分析」と、産業政策としての医療政策の歴史的形成過程とその効果について、事実認識を中心に整理を行ってきた。その結果として、政策分析を行うにあたっては、政策主体たる事業者団体等の政治過程,行政過程への考慮、すなわち、政策が単なる技術的決定ではあり得ず、政策過程における経済効率に関する評価が重要性であるとの認識を深めるに至り、より一般的な政策形成における政治過程への接近として、取引費用概念に着目した。メンバーの利益にしか関心が無い組織された利益集団との間の政治的相互関係により政策が決定されている場合、どのように経済厚生が影響を受けるかを評価する手続きとして、本年度は、多くのプレーヤーを巻き込んだ複雑な戦略ゲームである政策決定過程を、政府が異なる集団に対して格別の留意を払う過程を明確にする為に、政府と事業者団体に絞り検討した。
 代議民主制では、政府は、一般有権者の関心のみならず、利益団体によってもたらされた圧力に応じて、政策決定すると考えられる。利益集団は政策成果に影響を与える為に政治過程に参加する。利益集団への配慮による資金的援助と、その配慮に伴う有権者の離反を制約として、自らの効用を最大化するであろう。このような想定下での、経済政策の決定と実行における、政策主体である政府と事業者団体に関する理解として、組織されたロビー団体は、他の政策提案の下での自らのメンバーの期待を評価し、自らの厚生水準を最大化する事を約束する政党に対して資金提供する、と捉える政治競争アプローチと、経済政策が、既存政府がその政治支援を最大化する事を企図して設定されると理解する政治支援アプローチが有効である。
 日本の医療政策に関する評価を目的とした場合、実際の「政権交代」を考慮した場合、『政策のより詳細な細部――どれくらい異なる産業において好まれ、どのような政策手法が用いられるかの設定――に関しては、政治支援アプローチがより適切である』との結論は、支持出来るものである。
 このアプローチの含意は、政策の評価と、事業者団体の圧力生産の効率性に、かなり明確な関係性が見出せる、という事である。効率的に圧力生産がなされる環境とは、集合行為に有利な環境であり、メンバーのフリーライド統制費用を抑制する事で、集団による最適圧力を上昇させ、よってその集団利益を上昇させ得る。
 『ある職業が、他では競争価格で購入され得ないあるサービスを、その成員に与える組合を有する場合、その組合は独占者の立場にある』との指摘は、かつての医療事業者団体に関する記述としては説得力を有するものの、『個人は強制、或いは個別的に適当な誘導の欠如により、集合的に利潤機会のある活動に参加する事に失敗する』フリーライドの誘因に関してそれらでさえも自由ではない、という現状認識は、本プロジェクトでも常に意識され続けており、統制費用と集団規模の関係性や、競合組合の設立可能性(参入障壁)に関する歴史的・制度的事実の理解等、事業者団体の組織論的接近による成果とも整合的である。
 しかし一方で、『政治家と官僚も、圧力団体の集合利益を高める為に雇われて、彼らが極端に自らの利益から乖離した場合、選挙や告発によって、解雇或いは否認する』と仮定された官僚と政治家は、圧力団体が容易に彼らを否認出来ない場合、決定的な政治権力を有する可能性がある事等への批判には充分な解答を用意し得ていなかった。
 又、政治支援モデルの想定する、政府と、如何なるロビー団体のいずれも、その行動を変更する誘因を持ち得ない「政治均衡」に関しては、日本の医療政策において実現し得たのかを判断出来る、政治・社会状況に関する見識の、尚一層の獲得が望まれる状況である。
 更に、このアプローチにおいて、影響力の行使手段として扱われる政治献金については、未だ事実認識すら不十分な面も確認された。利益集団による「ギフト」として、しかし、政府の政策に影響を与える手段であるその重要性は、今後の分析においてより強く認識される必要性があろう。
 それらを踏まえた上で、現実の医療政策が「均衡」たりえていたのか、という事、又、実際どのような形態で『庇護を売り物にする』のかに関する定量的把握が、望まれる成果として再確認するに至った。

3)得られた成果
 上記の研究活動は、発足後5年経過しており、研究成果をプロジェクト報告書として刊行していく事が、来期要請される課題である。


03-04 現代地方政治分析

1)参加メンバー
責任者:宮崎隆次
参加者:大森彌、坂野潤治、小林正弥、光延忠彦(博士課程4年)

2)研究目的
 行政学、政治史、政治哲学など多様な手法を用いて、地方分権が喧しく語られている今日の、個別具体的な地方政治の現実を分析する。とりわけ、@中央地方関係、首長と議会の二元代表制、選挙制度、財政制度といった制度的要因とその変化、A政治主体(とりわけ政党)の相互行動により織りなされる政治過程、の相互連関に注目する。

3)研究経過と成果
 プロジェクト延長第1年目の本年は、大学院生の論文完成を第1の目標とし、論文草稿の批判的検討、新視点の提示、助言等を公式非公式に行った。光延は美濃部都政から現石原都政に到る時期の特に景気低迷(=財政危機)期を、各首長の選挙時の支持政党、首長と都議会との関係、首長と職員(特に職祖)との関係、各種選挙実施予定時期が近いか遠いか、現首長が次期選挙に出馬するか否か等の指標により分析した。しかし、時期により資料の質に濃淡があり、分析視覚の有効性になお若干の問題があるため、博士論文としての完成は見ていない。
 他のプロジェクト参加者は大学院生の論文指導の傍ら各々自由に研究目的に接近し、大森は編著『自立と協働によるまちづくり読本』(ぎょうせい)を発表、小林は『戦争批判の公共哲学』(勁草書房)『地球的平和の公共哲学』(東京大学出版会)と2冊の編著を発表した他、「理想主義的現実主義としての非戦憲法解釈」等を『千葉大学 法学論集』18巻3・4号に掲載した。坂野は『昭和史の決定的瞬間』(ちくま新書)を公刊、宮崎は戦前千葉市政の研究を継続した。


03-07 雇用関係における差別禁止の国際比較法研究

1)参加メンバー
責任者:手塚和彰
参加者:村山眞維、金原恭子、マリア・シルビア・アロンソ(博士課程) 

2)研究の経過
 今年度のプロジェクトは日本における雇用機会均等法の制定による変化の判例、実態における分析を行いつつ、他方アメリカ法,EU法における雇用関係差別の禁止法の構造を明らかにしてきた。そのためには、主に内部研究会において
(1) EUの男女雇用均等指針各国法への受入れ
(2) EU各国における批判  
 などの諸論点について、文献資料を収集し、研究した結果を報告し、討論してきた。
これらの結果については、内部資料として印刷し、最終報告への準備を行っている。

3)研究の成果
 日本法の展開をおさえるとともに、EU法の基本的な構造を明かにした。まとめた成果は未発表だが、その一部は千葉大学『法学論集』などに発表の予定である。


03-08 ユーラシア諸民族の叙事詩研究(2)

1)メンバー
荻原眞子(代表)、齋藤君子(日本口承文芸学会員)、坂井弘紀(和光大学)
丹菊逸治、朝 格査、オルトナスト(社文研院生)、スチン(文学研究科)

2)研究の経過
a) 本研究プロジェクトはメンバーの(海外出張、就職、退学などによる)大幅な移動のために、定期的な研究会を継続することが困難になり、院生を主に、毎週水曜日4限「比較伝承論」のゼミと隔週の火曜日夜の勉強会において研究、調査報告を検討した。どの研究発表もいずれは学位論文に結びつくことになるが、特に、現地調査で得られた音声資料のテキスト化が大きな課題となっており、その作業にはそれぞれ固有の問題があることが明らかになってきている。
b) 院生諸氏の発表テーマは以下の通りである。
* 朝 格査
『2003年1〜3月の現地調査から」、「エヴェンキ語の音韻について」、
「エヴェンキ語口承文芸の1テキスト」
* 丹菊逸治「アイヌとニヴフのシャマン伝承について」、「2003〜2004年冬期サハリン調査から」
* オルトナスト
「モンゴルの牧畜文化における馬の聖別」、「モンゴルの火に関する儀礼と信仰」

3)研究成果
本年度は準備中の報告書を年内をメドに発行する予定である。


03-11 語りと経験の変容

プロジェクト代表者:武井 秀夫
プロジェクト参加者:御子神(鈴木)明子、荒木田(鈴木)理恵、鈴木 勝巳、岩佐 光弘

活動報告
 2003年度についても、昨年度と同様本務が多忙であり、鈴木は個別研究を進めるにとどまったが、昨年度に引き続き、ドメスティック・バイオレンス被害者の、被害が身体化していった事例を収集し分析対象のデータの蓄積は深めつつある。昨年度、DV被害が身体化していった類型の整理を試みたが、今年度新たに収集したデータをもとに、さらに検討を進めていく予定である。また、インタビューの結果については、適宜教官や他の参加者と情報交換を行い、分析の視点等について討論を行った。
 御子神は、武井、間宮と共同で看護師および看護学生のインタビューを行い、看護教育から見えてくる看護師の職業文化についてデータを蓄積している。これについては2003年12月に行われた第23回日本看護科学学会学術集会(三重県)で発表した。今後は、同一人の継続したインタビューを行い、学生として看護教育の中で経験したことと、その後に看護師として臨床の中で経験したことの比較を中心として、引き続き検討を加える予定である。
 鈴木、岩佐は、ラオス人民民主共和国においてフィールドワークを実施中である。現在、調査地の基礎情報の収集、インフォーマントの選定といった、病気と経験の変容に関するインタビュー調査を実施するための準備を行っている。鈴木、岩佐は現在主に海外で活動をしているため、日本国内でのプロジェクト運営に実質的には関われていないが、定期的に連絡を取り合い、双方の進行状況を確認し合っている。両者が帰国後、語りに関する資料の通文化的な分析を行うことを視野に入れ、プロジェクト内で理論的、方法論的な検討を行っている。


03-13 北方文化の中のアイヌ

1)メンバー
代表:荻原眞子
参加者:中川裕、柳澤清一(教員)、北原次郎太、田村将人、丹菊逸治(院生)

2)研究の経過:
a)研究メンバーは、北海道の先史時代および近現代のアイヌの言語・文化・歴史について、それぞれの専門的な立場からアプローチしており、本プロジェクトではアイヌに関する学際的研究を目指している。特に、本年度の顕著な活動は北原ら院生が、各自の研究のほかに、共同調査(フィールドワーク、資料収集)を北海道において数度行い、得られた録音資料などを、新規購入の機器でデジタル化し検討したことである。
b)学外者を含めての研究会は、原則として毎月第2,4週火曜日を定例として開催した。
研究会の主な発表者は以下の通りである。
2003年
5月20日 丹菊逸治「アイヌとニヴフのシャマン伝承について」
6月10日 北原次郎太「木幣記述の視座」
6月24日 田村将人「「土人漁場」と樺太アイヌ集落のかかわり」
10月7日 エレーナ・ルィービナ「近代日本のアイヌ教育」 
11月11日 中尾ななえ「死者の住居焼却についてーアイヌ文化と日本」
11月25日 田村将人「オーラルヒストリーに聞く樺太アイヌの漁撈生活」

3) 研究の成果
* 荻原眞子「資料紹介:V.N.ヴァシーリエフ『エゾおよびサハリン島アイヌ紀行』」『北海道立アイヌ民族文化研究センター研究紀要』第10号、2004年3月25日
*田村将人「樺太アイヌ教育の黎明期(1)『itahcara』創刊号、2003年7月1日
*北原次郎太「北海道北東部のイナウの資料−地域性の検討のために−」『千葉大学社会文化科学研究』第8号、2004年2月1日
*丹菊逸治 「ニヴフ語のsindux『樽』についての短い考察」『itahcara』第2号、2003年12月


03-15 訪問歯科診療と高齢者のQOL向上の経済的評価

1)参加メンバー 
広井良典(責任者),武蔵武彦,桜井 厚,野村眞弓(博士課程),尾崎哲則(日本大学歯学部教授)

2)プロジェクトの内容
 このプロジェクトは,介護保険の導入以降に提供体制の整備が進み,各地域でサービスの提供が普及し始めた訪問歯科診療について,高齢者の生活の質(QOL)の向上に与える影響を考察することを目的としている。
 訪問歯科診療は‘往診’として医療保険制度上では実施が可能であったが,診療器材や設備の関係から、関心の高い歯科医師が自主的に装置等を開発・改良して行われていた程度であった。介護保険の導入を契機としてポータブルな診療機器や診療車などの開発や、提供体制の整備が進み、訪問歯科診療の実績が増加するとともに、その状況に関する調査や報告も増えている。それらの調査報告から、訪問歯科診療の多くは要介護状態で通院が難しかった高齢者の義歯の調整であること、義歯の調整を受けた高齢者の摂食機能が回復し、QOLの向上がみられることに注目し,訪問歯科診療の医療政策学・医療経済学的な評価を試みるものである。

3)研究の経過
 昨年度の研究において、特別養護老人ホームにおける口腔ケアに関する調査から、医療保険による医療行為としての訪問歯科診療と、介護保険によるケアサービスとしての口腔ケアについて、介護側と医療側、保険者の認識に差があることが浮き彫りになった。そこで今年度は高齢者の口腔ケアにおける医療的介入と予防的介入について問題点を整理することとした。関連する文献の収集(野村)、施設での口腔ケアに対するスタッフへの教育的な介入(尾崎)による資料の充実を図るとともに、社会保障政策における高齢者への年金・医療・福祉のあり方(広井)、その評価手法(武蔵、桜井)について検討した。

4)今後の計画
 2005年の介護保険の見直しにおいて加齢に伴う身体機能の衰えを防ぐ「介護予防サービス」の給付が検討されており、そのなかには“口腔ケア”も含まれている(2004年1月19日、2月24日付日本経済新聞)。この“口腔ケア”には口腔内の清掃方法習得の援助や義歯の調整が含まれており、本プロジェクトの研究成果が実践的な意義を持つと予想される。プロジェクト3年目となる来期は、高齢者の口腔ケアにおける医療的介入と予防的介入に関する事例研究、施設での口腔ケアに対するスタッフへの教育的な介入の報告、高齢者医療と介護の統合等についてとりまとめる予定である。


03-17 主体概念の再検討

1)参加メンバー
永井均(プロジェクト代表者)、高橋久一郎、飯田亘行、嶋津格、忽那敬三、望月由紀(博士課程院生)、壁谷彰慶(博士課程院生)、尾形まり花(博士課程院生)、村上綾(博士課程院生)、青山拓央(博士課程院生)、清水将吾(博士課程院生)、井上兼生(休学中)

2)研究課題
  本研究が取り組む主題は、(1)認識主体としての主体概念の検討(主客二分図式による哲学的説明の検討)、(2)行為者としての主体概念の検討、の二つである。
(1)は、哲学史的に近代以降主流となってきた主観/客観の図式を問い直すものであり、認識主体としての主体が問われることになる。具体的には、独我論、自己知、相対主義論などの問題が関与する。
(2)は行為者としての主体概念を扱う。日常生活における行為者の概念を手がかりに、具体的場面に使用可能な行為者概念を構築する。これは倫理学的・応用倫理学的問題にも関与する。
これら二つの課題を経ることで、より複相的な「主体」概念の考察が可能になると期待される。

3)経緯と状況
2003年度の参加者の研究状況は以下の通り。
望月由紀は、ホッブズを手がかりに、近代的な主体概念の研究を読み解くことで、現代における所有概念の研究に取り組んでいる。
壁谷彰慶は、自由意志論と懐疑論の研究をメインに、<超越的な視点>についての考察を進めている。
尾形まり花は、McDowellやC.Wrightらの文献研究に取り組みつつ、客観性と規範性について、理論の構築に取り組んでいる。
村上綾は、中世哲学の文献を読み直しつつ、神と「私」との関係についての研究を進めている。
青山拓央は、<今>とは何か、という問題意識を源泉に独自の時間論を展開している。
清水将吾は、<私>と世界との関係を、<私の身体>ということを手がかりに捉えなおす試みに従事している。
井上兼生は、昨年に引き続き、ビジネスエシックスにおける法的人格の概念について、現代的な主体概念の論議との関係について、研究を続けている。
望月は学会発表(日本哲学会)を行い、村上は学会誌(『哲学』)に論文を投稿した。青山は2003年11月の科学哲学会で学会発表をした。壁谷、尾形、井上も、学会誌に投稿する論文を準備中である。
また、教員4名は、関連ある分野で精力的に、それぞれの仕事を公表している。

4)今後の計画/研究報告書の発行

共同の成果は、来年(2004年)度に報告する。


03-20 ロシアの民衆と文化

1)参加メンバー
御子柴道夫(責任者)、大山麻稀子(博士課程)、新井正紀(博士課程)、渡辺圭(博士課程)

2)研究課題
 大山麻稀子の研究課題は、フセヴォロード・ミハイロヴィチ・ガルシンと1880年ロシア社会であり、当時の思想潮流と絡めてガルシンの作品及び人物像を考察する。新井正紀の研究課題は、ソヴィエト農業集団化期における民衆の抵抗運動である。渡辺圭は、ロシア正教会における20世紀初頭の異端的活動「讃名派」を研究課題としている。御子柴道夫は、東方正教受洗以降のロシアにおける宗教思想史を研究している。

3)本年度の研究成果
大山は、2004年度10月にロシア文学会にて、「1880年代文学批評に見るガルシン像」という題で研究報告を行い、2004年2月にはプロジェクト論文集『20世紀文学・芸術・思想の諸問題とその位相』に論文、「ナロードニキ思想とガルシンにおける「関係」の形」を発表する。
新井正紀は、2004年度ロシア思想史研究会夏季研究大会において、「農業集団化の進展と祝祭・儀礼の変質」というテーマで前期の研究成果を報告した。
渡辺圭は、2004年度ロシア思想史研究会夏季研究大会においてロシア正教会における20世紀初頭の異端的活動「讃名派」という内容の報告を行い、前期の研究成果とした。後期は、「無名の巡礼者―あるロシア人巡礼者の手記に関する考察」という題の論文を『社会文化科学研究』を掲載した。

4)今後の計画
 本プロジェクトは、参加者の中心人物である新井正紀の長期留学により、活動を中止せざるをえなくなった。これまでのこのプロジェクトのための個々の研究成果は、別プロジェクト「亡命ロシア人を中心とした思想的系譜」に反映させる予定である。


03-21 亡命ロシア人を中心とした思想的系譜

1)参加メンバー
御子柴道夫(責任者)、大山麻稀子(博士課程)、新井正紀(博士課程)、渡辺圭(博士課程)、浅野知史、堤佳晴、福間加容

2)研究課題
 19世紀末から第二次大戦終了欧米ロシア人を中心としたロシア思想の変遷を時代の流れの中で探ってゆくことを目的とする。その為、時代を@19世紀末から1905年革命まで、A1905年革命以降から1914年第一次世界大戦勃発まで、B1914年第一次世界大戦から1917年の革命まで、C1917年の革命から1922年のネップ期以前(ソヴィエト政権の初期)まで、Dネップ期から20年代、E30年代から第二次世界大戦まで、F第二次世界大戦後からスターリンの死亡までに分ける。それぞれに、代表的な論文一ないし二本を味読し、翻訳し、それぞれの時代の詳細な年表を作成する。その後、各自が上記のそれぞれの時代に関する論文を発表する。

3)本年度の研究成果
 当プロジェクトにおいては、既に思想家セミョーン・フランクの『ユートピア主義の異端』(1946年)、セルゲイ・ブルガーコフの『ロシア革命における人神宗教』(1908年)、エヴゲーニイ・トルベツコイ公爵の『戦争とロシアの世界的使命』(1914年)、ノヴゴロツェフの『聖地の復興』(1926年)の購読及び翻訳を完了している。現在は、『政治革命と社会革命について』(1914年)の翻訳を進めている。

4)今後の計画
 プロジェクトの3年目は、残った論文の翻訳と、年表作成、解説論文の執筆及びプロジェクト論文集の発刊を予定している。
プロジェクト論文集構成

第一部 1894−1904
1、 事件年表――政治、経済、社会、文化( 宗教、思想、文学、絵画、造形芸術、音楽 )。具体的な著作、作品は時代を画する事件的性格を帯びたもののみを挙げる。( 以下同 )
2、 翻訳――1900年、ウラジーミル・ソロヴィヨフ『反キリスト物語』『最近の出来事について』( 御子柴訳『三つの会話』刀水書房版より改訳しつつ転載。)
3、 解説――翻訳の著者の略伝、但し当該時期の記述に重点を置いて、その周囲にも視線を配りながら。(例ソロヴィヨフの場合は当時のロシア社会の日本観、終末感情などを考慮)( 以下同 )福間

第二部 1905−1913
1、 事件年表
2、 翻訳――1908年、セルゲイ・ブルガーコフ『ロシア・インテリゲンツィアの人神宗教』(浅野、新井、大山、堤、福間、横山、渡辺訳)
3、 解説――(例、立憲君主制成立に対するインテリゲンツィアの反応、ドゥーマの実態、カデットなどの党のありさま)渡辺

第三部 1914−1916
1、 事件年表
2、 翻訳――1914年、エウゲニイ・トルベツコーイ『戦争とロシアの世界的課題』(浅野、新井、大山、堤、横山、渡辺訳)
3、 解説――(例、第一次世界大戦に対するインテリゲンツィアの態度、その変遷)

第四部 1917
  前篇(10月革命まで)と後篇(10月革命以降に分ける)
1、 事件年表
2、 翻訳 1914年4月ベルジャーエフ『政治革命と社会革命について』1914年11月ベルジャーエフ『革命と反動』(仮)
3、 解説――略伝以外にボリシェヴィキ政権掌握前と後のベルジャーエフの論文を選び、その変化に注目する。

第五部 1918−20
1、 事件年表
2、 翻訳――ストゥルーベ?
3、 解説

第六部 1921−1925
1、 事件年表
2、 翻訳、1926刊ノヴゴロツェフ『聖なるものの復興』(浅野、大山、堤、渡辺、エカチェリーナ訳)
3、 解説――(例、インテリゲンツィアたちの亡命の実態、亡命者たちのネップ期ロシアに対する期待半分の眼差し)

第七部 1926−1935
1、 事件年表
2、 翻訳、イリーンの何かを選ぶつもり。
3、 解説 

第八部 1936−1945
1、 事件年表
2、 翻訳――1946年、フランク『ユートピア主義の異端』(浅野、新井、大山、福間、横山訳、初出『歴史科学と教育』20、21号)
3、解説――(例、ユダヤ人亡命者たる作者が第二次大戦をいかに経験し、その結果いかなる哲学的見解を抱くにいたったか)新井


03-22 モダニズム研究ー国際比較の観点からー

1) 参加メンバー
 前田彰一(責任者)、南塚信吾、石井正人、菊池利奈、小林直樹(博士課程)、伊藤孝一郎(博士課程)、辛大基(博士課程)

2) 本年度の研究成果
 菊地利奈は、昨春日本詩学会発行の学会誌SAPにマシュー・スイニーの詩3篇を翻訳掲載したが、それらの詩に関する注釈を千葉大学「社会文化科学研究」(第8号)に執筆した。辛大基は、李箱のモダニズムに比較文学的な観点から接近を試みて、彼の作品に見られる日本文学の影響を探ることに努めているが、そのような研究の一環として昨年10月日本比較文学会東京支部の例会において研究発表(「李箱と平戸廉吉の未来派文学」)を行なった。また千葉大学「社会文化科学研究」(第8号)に論文「李箱と日本モダニズム小説─伊藤整の初期小説との比較を中心に─」を発表した。伊藤孝一郎は、近く発行予定のChiba Review にジョウゼフ・コンラッドの『ロード・ジム』に関する論文を掲載することになっている。責任者の前田は、プロジェクト報告「Anglo―Saxson, Norse, and Celtic Studies 」に物語理論に関する論文を寄稿した。また2004年2月には、『物語のナラトロジー─言語と文体の分析』を、千葉大学人文科学叢書の1冊として出版した。


03-23 IT化の現状と雇用、職場関係の再構成

研究期間:2003年度―2004年度
参加者と所属:*犬塚 先(千葉大学大学院社会文化科学研究科日本研究専攻 教授)江頭説子(千葉大学大学院社会文化科学研究科日本研究専攻 2年生)黒濱 亮(千葉大学文学研究科1年生)

研究活動経過:
 産業構造の変化に対応した雇用構造の変化と、そこでの雇用選択に伴う諸問題を検討した。特に以下の4つの論点を中心に、雇用を取り巻く現状と、そこでの個人の「働き方」の実情を、文献、資料、そしてインタビューを基に分析し、中心となる課題とその解決のための理論的位置づけ、具体的制度のありかたについて、考察を行った。今後は、それぞれの問題点を集約し、理論的現実的観点から検討を加え、雇用創出を念頭に置いた雇用問題の解決策を探っていく。
1 若年(労働)者に見る仕事意識とその形成環境
2 キャリアのプロセスと自律性
3 転職を通してみる仕事意識の構造
4 仕事と雇用の柔軟化を高める諸条件


03-24 文化における権力と抵抗の諸相

1)参加メンバー
責任者:三宅晶子
参加者:前田彰一、西村靖敬、須藤温子(D3),渡部周子(D3)、冨安昭彦(D1)、許静(M2)

2)研究経過
 須藤温子は、ドイツ学術交流会(DAAD)給費生としてルール・ボッフム大学に留学していたが、期間を延長してカネッティ研究を続け、博士論文を執筆中である。渡部周子は博士論文を提出し、現在審査中である。許静は修士論文を提出し、修士を修了した。
 研究発表テーマは以下のとおりである。
渡部周子「明治期における少女の国民化」
許静 「満州国における牛島春子の文学作品に現れた中国人への視線/日本人への視線」」
冨安 昭彦「戦後日本における性転換に関する言説の分析」
「Krafft-Ebing, Psychopathia Sexualis,1886 の翻訳とその後―明治期の精神医学と優生思想」
明治期の精神医学におけるトランスジェンダーの病理化の一例として、この研究を行ううえで必要不可欠な資料である、 Krafft-Ebing, Psychopathia Sexualis (初版1886)の翻訳『色情狂編』(1894)、及び、呉秀三『精神病学集要』(前・後編1894〜5)について検討を行った。また、精神医学と優生思想については、優生運動の展開のひとつの結節点として、日本優生学会『優生学』(1924〜43)とその周辺を調査した。
三宅晶子「教育における心と法」

3)研究成果
<著書>
共著 小森陽一・三宅晶子他『ちょっと待ったぁ!教育基本法「改正」』学習の友社、2003年.第5章「教育基本法をめぐる危機とは何か」終章「教育の未来への展望のために」pp.115-147.単著 『「心のノート」を考える』岩波書店, 2003年, 総頁数71頁.
<論文>
三宅晶子.「『心のノート』のテクスト・イメージ分析」『現代思想』2003年4月号pp.122-138.
三宅晶子.「教育基本法「改正」の危機とは何か」『インパクション』135号, 2003pp.50-66.
三宅晶子」「「愛国心」はどのように教育され、法制化されようとしているのか――『心のノート』を中心に」『季刊 教育法』No.138, 2003, pp.17-25.
三宅晶子「『心のノート』を問う意味」大田田尭・尾山宏・永原慶二編『家永三郎の残したもの 引き継ぐもの』日本評論社, 2003, pp.163-166.
Srtoh, Haruko, “Eine seltsame Utopie der M?nnlichkeit: Otto Weiningers narzisstische Welt.” Neue Beitr?ge zur Germanistik に投稿中。
渡部周子「明治期における『少女』の国民化過程の考察 −『純潔』規範を事例として」『千葉大学社会文化科学研究』第8号、2004年2月、pp.77-85。
<書評>
三宅晶子「「こころ総動員法」前夜 緊迫のメッセージ」高橋哲哉『「心」と戦争』書評、東京新聞、2003 6.22.朝刊.
<学会報告>
渡部周子「黒田清輝の《樹蔭》についての試論」第54会美術史学会全国大会、2003年5月。

4)今後の展開
来年度の報告書作成に向けて、執筆論文についてのディスカッション、報告書プロジェクトを展開する。


03-26 脱工業化と都市の変容ー国際比較

<1>メンバー:雨宮昭彦、渡部薫

<2>今年度の活動内容:
○ 2003年3月:本件プロジェクト研究に関連して行なった英国調査により、グラスゴー、マンチェスター、ノッティンガム、バーミンガムを渡部は訪問し、資料を入手した。
○ 7月以降、英国の都市政策や都市再生、文化政策に関する資料の収集を行なった。
○ 上述したこれらの資料をもとに、英国の工業都市の脱工業都市への変容を、文化政策による都市再生過程に焦点を置いて情報の整理及び考察を行なった。具体的には、次のような内容について情報を整理、考察した。
・ 英国において、文化による都市再生がどのようなコンテクストのもとで生じたか、
 文化政策がいかにして都市再生に結び付けられるようになったか、その結果どのような問題が生じたかを分析,整理した。
・ 文化による都市再生について、実際的な方法とその考え方、概念等を検討
・ 文化消費都市への脱皮を中心にした文化による都市再生の一般的事例としてグラスゴーを取り上げ、都市のイメージ再構築のプロセスとその結果としての現在の状況についての情報を整理,考察を行なった。文化産業の誘導/育成に焦点を当てた都市再生の事例としてマンチェスター,シェフィールドを取り上げ、それぞれにおける文化産業の形成過程、その都市経済に与える影響等について情報の整理,考察を行なった。
 渡部は、中間的な研究成果として以下の3つの論文を執筆した。
渡部「文化による都市再生と創造都市――その史的解釈の試み」『社会文化科学研究』第8号2004年2月、所収。
渡部「文化による都市再生――英国の経験を参考として」社団法人全国市街地開発協会・市街地再開発技術研究所、平成16年3月。
渡部「『経済の文化化』の考察――経済活動の価値に何をもたらしたか――」
最後の論文については、現在、「文化経済学会誌」(文化経済学会)に投稿中である。
  以上の研究におけるキーワード等は以下の通りである。文化による都市再生、創造都市論、ポストフォーディズム・ポストモダニズムの都市空間、場所の再発見、英国産業都市の脱工業化と都市再生、文化消費、文化生産、文化産業の誘致、消費志向政策、文化産業地区、経済の文化化、ソフト資本主義。

[来年度の活動内容]
○ 基本的には、今年度行なった作業(資料の収集、それによる情報の整理,考察)により浮かび上がった問題点について、再度考察し、その上で、実際に現地においてヒアリング、文献収集等を行なって問題点に対応する情報の収集を行なう。
○ その上で,分析,考察を行ない、そこから日本の状況に対するインプリケーションを検討し、報告書にまとめる。
○ なお、「脱工業化と都市の変容−国際比較」のプロジェクトによる研究成果の拡大を目指し、同テーマにより外部資金の導入を企図して、サントリー文化財団「人文科学・社会科学に関する研究助成」に申請する。メンバーは本プロジェクトの2名を中心に拡大し、比較研究の実があがるように計画する。


03-27 ユーラシア諸言語の動詞論(3)

1)参加メンバー
プロジェクト代表:中川裕(日本社会論講座)
参加者:長崎郁、童鳳環、李林静、呉志剛(社会文化科学研究科)、田村雅史(文学研究科研究生)、閔慶仁、江波戸文康、Natasha Neustroeva、木村恵介、石井敬子(文学研究科)

2)研究の経過
 本年度は隔週火曜日夜、定期的に研究会を開き、本プロジェクトに関連する各自の研究成果を発表、また外部から関連する分野の研究者を招いて発表してもらい、討論するなどのことを行った。主な発表は以下のとおりである。
田口善久氏(文学部助教授):2003年3月 西家語の調査報告
童鳳環:日本語の連帯修飾構造−限定的・非限定的な連来修飾語をめぐって
長崎郁:コリマ・ユカギール語における動詞の与格接尾辞-ngninについて
朝克氏(中国社会科学院):中国におけるトゥングース語研究の現在
李林静:2003年7−8月 ホジェン語調査報告
小野智香子氏(東京大学 日本学術振興会特別研究員):2003年12月 サンクト・ペテルブルク市における北方諸言語関係の研究施設訪問報告
井筒勝信氏(北海道教育大学旭川校):旭川におけるアイヌ語の現状と未来への動き丹菊逸治(社文研):2003年11月−2004年1月 ニヴフ語調査報告

3)研究の成果
 本年度は初年度であり、成果報告は次年度に行う。なお、メンバーのうち長崎・李の両名は、2004年1月23日に東京学士会館で開かれた、日本言語学会危機言語小委員会主催のシンポジウム「危機言語」において、それぞれユカギール語とホジェン語の現地調査成果についてポスターセッションを行った。


03-28 フランコフォニー(仏語圏)研究

1)参加メンバー
プロジェクト代表:長谷川秀樹
参加者:古川和美(休学中・社会文化科学研究科)、鳥羽美鈴(一橋大学大学院言語社会研究科修士課程)

2)研究の経過
 2003年度は古川和美氏が休学で参加できなくなり、学外参加者の鳥羽美鈴氏が修士最終学年にあたったため、修士論文『フランコフォニーとフランス』の作成およびこれに関する研究についての指導に当てられた。
第1回 2003年10月1日 
修士論文「フランコフォニーとフランス」の全体構想について
第2回 同年11月4日 
修士論文「同」について特に章立てなど論文構成の変更について大幅な修正を求める。
ヨーロッパ機関におけるフランス語使用率の低下について
第3回 同年12月6日
修士論文「同」について鳥羽美鈴氏より書き直し原稿完成
フランスにおける地域語問題、コルシカ問題について
第4回 同年12月23日
修士論文「同」について詳細な小見出しおよび語句についての指摘を行う
フランコフォニー国際組織成立過程についての概略
第5回 2004年1月5日
修士論文「同」について鳥羽美鈴氏が最終原稿を完成
フランコフォニー・サミット参加国の資格について。
第6回 同年1月19日
修士論文提出後の総括と今後の研究方針について打ち合わせ
第7回 同年2月22日
コルシカ島問題について
L.S.サンゴールの『エスプリ』1962年11月号の論文の分析
第8回 同年3月6日
アラン・フィンケルクロート、ミシェル・セール、レジス・ドゥブレについて
白水社の翻訳の件について
第9回 同年3月29日
レジス・ドゥブレについて(2)
今年度の研究活動の総括および次年度の展望について
特別研究会 2004年3月14日および21日
(フランコフォニー・フェスティバルとアラブ世界の映画について)    

3)研究の成果
 プロジェクトとしての成果は、2003年度は鳥羽美鈴氏の修士論文提出と重なったために、今年度は見送ることとし、2004年度中に報告書を刊行することを目指す。また、Xavier Deniau La Francophonie PUFの翻訳刊行を考えており、現在白水社と交渉中である。うまくいけば2004年度末の翻訳刊行を目指す。


03-29 近代日本の女性美術家と女性像に関する研究

参加メンバー
研究代表者:社会文化科学研究科 助教授 池田忍
博士課程 3年(修了)山崎明子、博士課程 1年 吉良智子

 本年度、近代日本の女性美術家に関する本研究プロジェクトでは、参加者全員が関与して、女性をターゲットとした美術教育機関として20世紀初頭から重要な役割を果たした女子美術大学付属の資料館・同大学同窓会での調査をおこなった。まず、資料館では、学生募集要項等の教育課程に関する資料、過去の在学生の作品のほか、卒業生によって寄贈された在学中の教材、卒業後制作した作品や自ら開発した教材や資料などを閲覧・調査した。また同窓会では、卒業アルバム・同窓会誌、同窓会名簿等の資料を閲覧・調査した。これらの資料は、女性美術家の出身階層・教育制度と理念の推移、さらには彼女らの卒業後の創作活動を支えるネットワーク等の解明に資するところが大きい。撮影作品やコピーが許可された資料は、データをコンピューターに入力し、資料整理をおこなった。一方で、女子美術大学関連の資料を検討することによって、女性による美術制作の変化の状況、特定分野の作品の主題や表現技法の推移、また女性の作品や彼女たちの挙動や社会的な活動に対する評価や批判の実態などが浮かび上がってくるわかったため、検討のための勉強会を重ねた。
 また、美術家本人や遺族のもとに遺された、あるいは美術館や画廊等の機関が寄贈・寄託を受けて管理する作品や関連資料についても、プロジェクト参加者が個別に聞き取り調査や資料閲覧に赴いた。吉良は、15年戦争期に結成された「女流美術家奉公隊」の研究に主眼を置いているため、そのメンバーであった松村綾子氏の作品・資料を保管する京都の星野画廊で調査し、また高崎市に在住の元メンバーの石村五十子氏を訪問し、聞き取りをおこなった。山崎は、関西における女性美術家教育史上重要な位置を占める画塾「赤艸社」関連の資料を遺族および芦屋美術館で池田とともに調査し、また画塾の生徒であり絵画制作を続けた藤村はつえ氏を訪問し聞き取りをおこなった。その他、女子美関係者のもとで、資料閲覧をおこなう機会に恵まれた。池田は、海外における両大戦期の女性美術家の活動に関する資料収集と調査を、比較検討のためにおこなった。初年度であるため、主として資料収集に集中した一年ではあったが、関係者の協力に恵まれ、今後の分析・研究の基盤が整いつつある。
 来年度は、特に女性美術家によって制作され作品や活動に対する批評の調査に力を注ぎたい。また、調査結果の分析を深め、近代国民国家の形成と成熟にともなう「女」の概念の構築と展開の過程について視野を及ぼしつつ、美術表現とその受容の問題を社会的機能とのかかわりの中で解明していきたい。


03-30 経済システム移行の比較研究 

参加メンバー
研究代表:秋元英一
折原淳一、秋元英一、中窪裕也、雨宮昭彦、古内博行、金原恭子、スラビンスカヤ・エカテリーナ以下に、平成16年2月3日(火)に行った研究会の内容を紹介する。
報告者:スラビンスカヤ・エカテリーナ
「社会主義から資本主義への移行期の研究 ――ロシア経済を中心として」

出席者: 秋元英一、阿部清司、古内博行、荻山正浩
報告内容配架のようである。これまで社会主義体制をとってきた諸国は、おおむね資本主義への移行をめざしているが、その移行プロセスは苦難に満ちている。なかでも、本研究の焦点であるロシア経済は移行にさいしてどのような問題に遭遇しているかを考える。
 ロシア経済に関しての先行研究の中から、カナダのオンタリオ大学のコンスタンチン・ルキーンの博士論文(2002年)を選択した。題名は“The transition to a market economy and some features of industrial organization in Russia”(「市場経済への移行過程とロシアにおける産業構造の特徴」) である。

第1章は東ヨーロッパのほとんどの国で見られた産出のU型軌道(trajectory)について述べている。オリバー・ブランチャードが先に“Theoretical Aspects of Transition”(「移行過程の理論的諸側面」)(1996)で発表した産出低下モデルとほぼ同じ前提を使用しているが、もともとモデル自体が異なる。ブランチャード・モデルの場合、国営企業は投入物市場で競争的だとされているのに対して、ルキーン・モデルでは国営企業が産出市場で競争的だとされている。ルキーンの分析が示すように、買手サイド(ルキーン・モデルでは消費者のこと)の混乱がなくて、理想な状況であっても、初発段階の産出低下は免れない。ルキーン・モデルは移行過程における競争と買手のどのような行動が産出低下に導いたのかを検討している。もしも、市場セクターに目立った障害がなければ、市場セクターの増大は経済全体の産出低下を相殺できる。

第2章では、移行過程においてしばしば見られる「移行リセッション」をどう説明できるか、について考察されている。移行初期段階では、旧来の企業が市場の多くを独占していることと、新規参入企業が旧来の企業の生産の落ち込みをカバーできるほどには産出を増やせないので、リセッションとなる。リセッションは、人々の所得減退、外国との競争、そして需要構造によっても説明できる。この段階で競争的なのはむしろ買い手である。移行期にはさらに、生産コスト、需要の状態、制度的環境についての不確かさが大きいので、この不確かさをどうモデルに組み入れるかを考える必要がある。筆者は、買い手の留保価格が優勢な時点と新規参入の売り手が一般化する時点との間隔が長いほど不確かさが増大すると考えた。つまり、純粋な計画経済では、買い手の価格は動かないし、純粋な市場経済では価格は上下するが、その変動は気まぐれではないのだ。したがって、市場の動向に適応できる新しい買い手が増加するまでは、需要の不確かさが支配する。

第3章はロシア経済における、売り手独占、買い手独占と企業間の未払い残金について述べている。計画経済のもとでは、双方向独占があれば、古典的な独占モデルの場合に想定される産出レベルよりもはるかに低いレベルにまで産出レベルが落ちることがありうる。 そこで政府の介入となるが、政府補助金は一時しのぎにすぎない。ロシアの産業構造が根本的に変わらなければ、解決にならないのである。その状況が企業間の未払い残金の累積によって複雑になる。政府の補助金は、価格追随者に与えられると、より効果的となる。契約遅滞が大きいときには、売り手が補助金を大半せしめる。買い手独占の場合には、売り手は価格追随者であるとことによって、また、売り手独占の場合には価格リーダーであるとことによって、結果は異なる。買い手が一般に未払い残金が高いレベルであることを好む事情が、ロシアの移行期経済における極端に長期の未払い残金を説明するひとつの要因ではある。ただし、それ自体はモデルにとっては外的パラメターとして扱う。

第4章はロシアにおけるコーポレート・ガバナンスと経営問題を扱っている。筆者はGrossman and Hart (1980) “Takeover bids. The free-rider problem, and the theory of the corporation”(グロスマン、ハート「乗っ取りのやり方、フリーライダーの問題と企業の理論」)などを参照しながら、ロシアでは、所有が分散しているのに、企業コントロールがトップ経営陣の手に独占されている状況の把握が前提となると説明している。コントロールによる利益が膨大だからという事情もある。彼ら経営者たちはまた、外部者の所有に徹底して反対だが、それはこれまで説明してきた事情よりすれば、きわめて合理的な行動選択であることがわかる。いずれにせよ、国際基準のコーポレート・ガバナンスに近づくためには、経営者のみならず、政府の政策もより洗練されなくてはならないのである。

質疑応答では、筆者のモデルについての報告者の理解度や、コーポレート・ガバナンスのあり方などに議論が集中した。


03-31 現代高齢化社会における家族をめぐる諸問題とその法的構成 

1)参加メンバー
責任者:半田 吉信(千葉大学)
参加者:小賀野晶一(千葉大学) 鈴木 真澄(博士課程1年)

2)研究の経過
 本研究は、参加者鈴木の研究課題に基づくものであり、ドイツの家族法を含むドイツ民法に関心を持つ半田及び従来成年身上監護について研究をしてきた小賀野の三人でチームを組んで、今大きく移り変わっている家族及び家族法を総合的に研究しようとするプロジェクトである。平成15年後期(平成15年10月から平成16年1月)には、ドイツの成年後見法(ドイツ世話法)に関する文献(Zimmermann,Betreuungsrecht,1999)を半田の大学院での授業で講読し、わが国における成年被後見人の身上監護の問題の研究に大きな示唆を受けた。半田は、以前ドイツの子供の監護の問題について関心を持ち、幾つかのテーマについて論稿を発表してきたが(「ドイツにおける子の引渡請求とその強制方法」小野幸二教授還暦記念論集(法学書院)(平成8年)、「ドイツ民法における子の引渡請求」西原道雄先生古稀記念現代民事法学の理論上巻(信山社)(平成13年))、ドイツの成人監護に関する文献の講読を通じて、このような問題についても関心を呼び覚まされた。小賀野は、学位論文となった「成年身上監護論」(信山社)(平成12年)執筆後も、この成人身上監護に関する成年後見法下の法適用状況の追跡調査を行っている。鈴木は、法律学的アプローチを研究の主たる方法としつつ、このドイツの世話法に関する知見のほかに、広く現在わが国で新しい成年後見法及び老人介護法のもとで生起している諸問題を社会学的視点をも取り入れていわば学術的な研究として論文をまとめるための準備を行っている。

3) 研究の成果
 小賀野は、前任校(秋田大学)での研究:「成年身上監護制度論の展望」実践成年後見3号(平成14年)に続いて、「成年後見法における補助・保佐の位置づけ」実践成年後見7号(平成15年)などを執筆した。鈴木は、「成年後見制度における身上監護−ドイツ世話法を踏まえて−」及び「書評:岩沢勇・利用者のためのケーススタディ成年後見」を執筆した(いずれも未発表)。

4) 平成16年の予定
 平成16年度には、前年度以来読み進めているツィンマーマン・ドイツ世話法の講読を継続する予定である。また半田の研究予定としては、20世紀の末に幾つかの点でかなり大きな法改正が行われたドイツ家族法典の邦訳作業に着手したいと考えている。更に、日本では鈴木禄弥教授の邦訳になる「シュヴァープ・ドイツ家族法」(但し、新しい法改正は収録していない)があるだけであるが、新法を踏まえた新しいドイツ家族法のテキストが発刊されれば、参加者を募ってその邦訳を行うことも考えている。小賀野は、引き続き、成年身上監護のわが国における法適用の実情を調査、研究する予定である。また鈴木は、ドイツの身上監護制度をも踏まえた、わが国における身上監護と家族のシャドウワークの関わりなどに重心を置いた「家族と法」に関する研究を続けていく予定である。  


03-32 日本と中国の法制度の比較研究 

1)参加メンバー
責任者:岩間 昭道
参加者:冷 羅生(博士課程1年)、符 衛民(博士課程1年)

2)研究課題
 日本と中国の人権及び統治制度の比較研究をとおして、現在進行している中国における憲法上の制度改革に資すること。

3)研究経過
 平成15年度は、本プロジェクトの初年度であったことから、大学院の授業で、参加者が比較研究すべきいくつかのテーマについて報告を行うことを通して、各人の具体的な研究テーマを模索した。具体的には、冷は、日本の裁判制度についての研究をすすめ、報告を行うとともに、中国の裁判制度の問題点と改革案を検討し、平成16年3月の全体研究会で報告したほか、後述するような一連の成果を発表した。符は、日本の財産制度について検討を進めるとともに、授業で、現在中国で進行している財産制度の改革についてその問題点を検討し、平成16年3月の全体研究会で、その成果を報告した。

4)研究成果
冷は、上記の研究にもとづいて、以下のような成果を発表した。
@著書「日本現代裁判制度」(中国政法大学出版社・2003)
A論文
.「日本の司法試験、法曹養成制度およびわが国への参考について」 中国最高裁判所国家裁判官研修所編 『司法裁判動向及び研究』第2巻第2集 (法律出版社・2004)
.「疫病学原理の公害事件での応用について――千葉川鉄大気汚染訴訟の精評」中国最高裁判所国家裁判官研修所編 『司法裁判動向及び研究』第2巻第3集 (法律出版社・2004)
.「中国の裁判官管理制度の一考察」『社会文化科学研究』第8号 千葉大学 221-228頁
近刊予定
.「中国裁判官官僚制度の批判」 中国最高裁判所国家裁判官研修所編 『中国司法裁判論壇』第2巻第4集 (法律出版社)
B 学内報告
.「中国の裁判官管理制度の一考察」社文研全体研究会 2003年9月24日
.「中国の審級制度の改革――三審制導入を展望して――」社文研全体研究会 2004年3月15日
符は、上記の研究にもとづいて、以下のような成果を発表した。
@ 学内報告
・ 「日本と中国の財産制度の比較」社文研全体研究会 2003年9月24日
「中国における財産権」社文研全体研究会 2004年3月15日


03-33 金融数理の基礎教育課程の構築に関する研究

1)参加メンバー
金子文洋(責任者)、榊原健一、井上猛継(博士課程)、荒巻英司(博士課程)

2)研究課題
 デリバティブ(金融派生証券)の価格決定式であるブラック・ショールズ公式は、大別して、2つの方法で導かれる。熱伝導方程式の解としてBS公式を導く偏微分方程式アプローチと、確率過程論の応用としてBS公式を導くマルチンゲールアプローチである。後者ならば、連続型取引時間だけでなく、離散型取引時間でも理論展開が可能である。ただし、BS公式自身は連続型取引時間で表現されるから、離散型で理論展開した場合でも、最終的には極限操作で連続型に移行することになる。Mアプローチによる理論展開の骨格を記述すれば次のようになる。(1)数学理論の準備[ラドン・ニコディムの定理、ギルサノフの定理、マルチンゲールの表現定理]、(2)無裁定理論の基礎[マルチンゲール測度の存在定理(無裁定なら存在)、マルチンゲール測度の一意定理(市場が完備なら一意)、デリバティブ価格の決定定理]、(3)ブラック・ショールズ公式の導出。
 離散型の無裁定理論はハリソン・プリスカ(1981年)に与えられており、丁寧な解説をすれば、社会人の院生や学部初年級の学生も理解可能な内容である。そして、離散型での理論展開が連続型での理論展開の雛形になっている。従って、離散型のMアプローチによる正統的で効率的な金融数理教育が期待される。しかし、これを正面から実行した例は無く、現状の金融数理(金融工学)教育コースにおけるBS公式の扱いは、次の何れかの方式をとっている。方式1:数学理論の準備や無裁定理論の基礎には触れず、単純な2項分布モデルをベースに理論展開し、中心極限定理でBS公式を導出する。方式2:数学理論の準備と無裁定理論の基礎とを概要のレベルで扱い、BS公式の導出も形式的計算にとどめる。方式3:数学理論は(連続型で)既知とし、無裁定理論に重点をおく。BS公式の導 出よりも、経済学本来の裁定・最適性・均衡を主テーマに理論展開する。
 方式3は経済学研究の当然の態度ではあるが、金融数理(金融工学)教育における基本的責任を回避している。本プロジェクトの目的は、方式1や方式2の状況を変革し、経済系コースにおける正統的な金融数理教育の実現を目指すことである。

3)本年度の研究成果
 本年度は「数学理論の準備」、特に有限離散型の確率解析に取り組んだ。予備知識を仮定することなく、初等数学のセンスと腕力で、厳密・詳細・明晰に展開した。これを可能とした基盤は、確率ゼロを自然な状況として取り込んだ有限離散確率空間である。これを設定したことで、条件付確率、条件付期待値、確率測度の絶対連続性、ラドン・ニコディムの定理、確率測度の変換定理が、一般形式を損なうことなく離散化された。ギルサノフの定理(有限離散型)は、井上の修士論文(2002年度)に初等的証明の詳細が与えられている。

4)今後の研究計画
 「無裁定理論の基礎」と「ブラック・ショールズ公式の導出」を、初等数学のセンスと腕力で、厳密・詳細・明晰に展開する。また、金子と井上は、超準解析のアプローチによる金融数理(教育)も検討する。


03-34 日本近代文学と宗教

1)参加メンバー
責任者:滝藤満義
参加者:欒殿武(城西国際大学)、大島丈志(博士課程修了)黄育紅(博士課程3年)、小嶋洋輔(博士課程2年)、王書艪(博士課程1年)、高橋孝次(同)、西田一豊(同)

2)研究の経過
 メンバーに宗教と関連の深い作家(宮沢賢治、遠藤周作、芥川龍之介、稲垣足穂、福永武彦)を研究テーマに選ぶ者が多くなったので、日本近代文学と宗教の問題を深く研究しようとプロジェクトを立ち上げた。二年計画で、一年目の本年度は銘々がそれぞれの問題意識にしたがって、宗教にかかわるテキストを選び、全員でこれを読んで検討して、宗教問題についての識見を深め、次年度には具体的な各自のテーマ、素材で研究発表をし、論文を書く作業に入るという手はずにした。本年度は、以下のようなスケジュールで研究会を持った。
・2003.5.29   担当:小嶋洋輔
テキスト:井上順孝著「若者と現代人の宗教――失われた座標軸」
・2003.6.26   担当:西田一豊
テキスト:セーレン・キルケゴール「死にいたる病」
・2003.7.24   担当:王書艪
テキスト:隅谷三喜男「近代日本の形成とキリスト教」
・2003.10.23   担当:高橋孝次
テキスト:ジークムント・フロイト「モーセと一神教」
・2003.11.20   担当:大島丈志
テキスト:山折哲雄「近代日本人の宗教意識」
・2004.1.22   担当:欒殿武
テキスト:アンリ・マスペロ「道教」
・2004.2.23   担当:滝藤満義
テキスト:松原秀一「異教としてのキリスト教」
・2004.3.18   担当:黄育紅
テキスト:池永孝「中国思想と日本の宗教」

3)研究の成果
 現代日本の宗教状況を、上記の研究会のみならず、銘々がテキストを選ぶ過程でかなり勉強することができた。またプロジェクト予算で、宗教関係の研究書を買い整え、共通の参考書として利用できるようにした。本当の成果は個々のメンバーが次年度の研究発表にどう反映するかで決まるはずである。


03-35 現代中国の法変動と政策形成

1)プロジェクトメンバー 
湯本国穂(現代都市論・中国政治論)顧志雄(中国所有権論)

2)経緯と状況 
@ 研究課題についての情報が定期的に入手できるような性質ではないため、情報を知りえた都度に連絡をとり検討を行った。
A 改革開放政策下の中国では、所有権に基づく商品交換の管理が党の重大な課題となったが、それは、当然、法の大きな変動を伴う。この変動に当たって、専門家、党組織、行政機構、立法機関(人民代表大会・人民代表大会常務委員会)は、それぞれどのような関係をもちながら活動を行っているのか、言い換えれば、法変動という課題に対して、政策形成の過程にはどのような論理が働いているのか、社会的利害や観念の衝突はどのように処理されているのか、を民法典の形成をとおして知ること、これをこのプロジェクトの目標とした。初年度は、政策形成過程の制度化された枠組みと、政策形成の過程で専門家の間で何が争点となったかの二点を追跡した。
《政策形成過程の制度化された枠組》中国共産党中央には、政策分野毎に、政策形成推進のための小集団が置かれている。この小集団は、一般に領導小組、或いは委員会と呼ばれ、特定の政治局員が活動の責任を負っている。司法と法形成の分野では法政委員会と呼ばれる小集団がその役割を果たす。
 この小集団は、関連する知識をもつ人々を組織して、政策形成に当たっての論点整理や調査活動計画の策定を行うが、討論のための組織化の対象となる者は主に、中国科学院、中国社会科学院や大学に所属する専門家、そして関連分野の官僚達である。ここでの議論の結果は、党政治局常務委員会、次いで政治局会議に提出され、その承認を経た後、人民代表大常務委員会法律工作委員会の党組に通知され、党組は法律工作委員会の討議資料を準備し、討議方向を示唆する。
《専門家の間での物権法上の争点》法律工作委員会に対して、中国社会科学院法学研究所・梁慧星が指導するグループが提出した案と人民大学・王利明が提出した案とは、国家所有権に対して特別な保護手段を定めるか否か、集団所有権を別に規定するか否か、不動産の質権と買い戻し権を意味する典権を認めるか否かという点において対立した。言い換えれば、梁慧星案は純粋な市場を志向し、王利明案は国家による経済管理の保護と伝統的な不動産売買観念を考慮に入れた内容をもっていた。それらは、どのような社会的諸利害の表明であるのか。この追及が次の課題である。


03-36 中国と日本の医療・社会保障システムの比較研究

1)参加メンバー
広井 良典(責任者);
陳 金霞(社文研博士課程院生)、高 桂月(社文研博士課程院生)。

2)研究課題
 このプロジェクトは、中国と日本における医療、社会保障システムの比較研究であり、日本及び先進諸国の経験から中国の社会保障制度、医療整備・改革に対する示唆や適用可能性を検討し、両国の社会保障や医療分野での相互交流や協力関係に寄与することを目的としている。

3)研究の経過
 本研究は、中国と日本の医療システム(社会保障制度、医療の制度、供給、高齢者介護を含め)を中心に、その制度の特徴(メリット・デメリット)や両国の相違点、日本の制度が中国に与える示唆や中国への応用可能性について考察している。2003年度は、主に日本の社会保障制度、医療システムを課題として研究に取り組んだ。これまで文献を幅広く調査し、資料の収集と社会保障、医療システムについての関連著書を読解、分析している。このことにより、研究プロジェクトの研究成果を上げる予定である。
具体的に、下記の研究分野の関連資料、文献、データ収集(中国・日本)を行い、分析研究している。
・中国の社会変動と社会保障制度、特に医療保険制度改革の現状
・日本の社会保障制度、特に医療保障制度
・医療財源について、医療政策、福祉国家政策
・医療提供(病院)、医療提供者、医療提供システム
・医療内容、技術(含疾病予防)
・新しいケア・モデルの展開:在宅医療、介護医療
・関係英文献も加えて、研究を進めている。
2004年度から中国の特定地域−遼寧省において、具体的なフィールドワークを行い、医療提供システム、医療提供者、企業管理部門などへインタビュー調査などを実施することにより、制度の分析や必要データの収集を行う。また日本においても医療施設、医療内容の調査、研究を進めていきたいと思う。中国遼寧省の研究成果を加えて、実地研究と理論的考察を統合し、中国と日本の社会保障制度、医療システムを比較分析する。中国における今後の望ましい医療制度や日本の社会保障システム、医療提供のあり方についてまとめたいと考えている。

4)今後の計画
2004年度は本研究プログラムを推進して、社会変動に伴う社会保障、医療システムの構造変化を明らかにし、研究プロジェクトの研究成果を取りまとめる予定である。


03-37 語彙と文法の相関ー比較・対照研究の視点から

1)参加メンバー
責任者:松本泰丈
参加者:下地賀代子,エレナ・パンチェワ,仲原 穣(社文研院生)
董 慧頴,楊 明,李 南征,ヤヤン・スヤナ(社文研外院生)
陳 露,中本 謙(社文研外研究者)

2)前年度の研究活動:
 プロジェクト責任者及び参加者が集まり、以下の内容において計3回の研究会を行なった。会では発表に関する意見の交換や研究の進行状況の報告がなされた。
第1回研究会−2003/07/31 14:00-17:00
内容:研究発表 (発表者 下地賀代子)
(発表題目「宮古多良間方言の音韻及びその変化の現象」
第2回研究会−2003/11/06 14:00-17:00
内容:文献講読, 于康・張勤編2000『語気詞と語気』好文出版 (発表者 李 南征)
第3回研究会−2004/02/16 14:00-17:00
内容:発表題目「'言語類型論'概説-Active structure-」(発表者 下地賀代子)

3)研究成果
研究論文
下地賀代子 「宮古多良間方言の格形式」(『対照言語学研究』13 海山文化研究所2003.12)
下地賀代子 「宮古多良間方言の待遇表現―動詞形態論の視点から」(『社会文化科学研究』8 千葉大学大学院社会文化科学研究科2004.2)
下地賀代子 「宮古多良間方言の音韻及びその変化の現象」(『琉球の方言』28 法政大学沖縄文化研究所 2004.3)
下地賀代子 「南琉球方言の空間表現―宮古多良間方言の「空間格」―」(『国文学 解釈と鑑賞』2004年7月号掲載)
エレナ・パンチェワ 「オノマトペにおける濁音の分布と意味」(『社会文化科学研究』8 千葉大学大学院社会文化科学研究科2004.2)
仲原 穣 「沖縄の言語―「琉球語」または「琉球方言」として―」(『InterCommunication』46(12-4,通巻47) NTT出版 2003.10)
仲原 穣 「久米島真謝方言動詞の活用」(『琉球の方言』28 法政大学沖縄文化研究所2004.3)
陳 露  「中国語の指示語から―日本語との対照をかねて―」(『国文学 解釈と鑑賞』2004年7月号掲載)
〇学位論文〇
董 慧頴 「現代日本語における敬語の用法―小説会話文を中心に―」(修士論文)2003年12月提出

4)来年度に向けての課題と目標:
 本研究では、語の語彙的意味と文法的意味との相関関係、例えば、ある文法的形式の実現する文法的意味に対して、語の持つ語彙的意味がどのように関わっているかを、明らかにすることをその目的としている。語彙論や形態論にその研究の範囲を限らず、音韻、統語、意味論における問題をも広くその視野に含めつつ、主に日本(共通)語を中心に、他言語(外国語,方言)との比較・対照研究を通して上記テーマの考察は行われている。他言語との比較・対照によって、これらの研究の成果は日本語研究のみならず、広く一般言語学的にも有意義なものであると思われる。来年度は、論文集の発刊にむけ、研究会での発表や中間報告などの研究活動を通し、参加者各自が、自身の研究成果を形あるものにまとめていく段階にあり、その作業の達成が同年度の課題となる。


03-38 東アジア(日本・中国・韓国)の土地・環境法制の比較研究

1)参加メンバー
 鎌野邦樹(プロジェクト代表者)、竹田智志(博士課程院生)、ホビスハラト(博士課程院生)、カン・ショクシン(博士課程院生)、顧志雄(博士課程院生)、松井美知子(博士課程院生・休学中)

2)活動および内容
 本年度は、週に1回程度、各自が上記のプロジェクトに関連するテーマについて報告をし、議論をした。鎌野および竹田は、主として日本のマンション法制、ホビスは、中国・モンゴルの土地(放牧地)の利用と法制度、カンは、韓国のマンション法制、顧は、中国の借地および典権制度について取り上げた。なお、この定期的に研究会には、修士課程の学生の参加も認め、議論に加わった。
 研究成果としては、鎌野邦樹「現下のマンション法制の課題と外国法制」日本マンション学会・学会誌15号(2003年)等に発表した。また、カンヒョクシン「韓国の分譲集合住宅の建替え及びリモデリング制度に関する民事法的考察」が学位論文として提出され、2003年3月に法学博士の学位を得た。同論文は、本プロジェクトの成果でもある。

3)来年度に向けての課題と目標
 2004年度は、本年度の成果を踏まえて、さらに研究を継続し、特に、日本の団地の建替えをめぐる問題、中国・モンゴルの放牧地と日本の入会地の法的比較、および日本と中国の借地および担保法制の比較を考察したい。そして、それぞれの研究成果を、竹田、ホビス、顧の学位取得論文として結実させたい。


03-39 「伝承」に関する学際的研究

1)メンバー
荻原眞子(代表)、三浦佑之、中川裕、桜井 厚(社文研)
寺井正憲(教育学部)、和田健(留学生センター)、藤かおる(作家)、水口ますみ
(出版社)、高森智子(花園小学校読書指導員)、大西奈津紀(県庁)、北原次郎太、 朝格査、オルトナスト、スチン(院生)

2)プロジェクトの概要
 現代社会における「伝承」という営為に着目し、「語ること:聴くこと」という言語活動を多角的に研究し、こどもの教育から口承文芸の行方、少数民族の言語文化の危機的状況にいたる諸問題を検討し、現代の社会・文化的問題を考察するマクロな視座を構築することを目的とする学際的な研究。このプロジェクトはすでに2002年から着手され、研究会の回数を重ねながら、プロジェクトとして継続する運びになった。メンバーは、日本、ユーラシアの言語文化、社会学、心理学、小中学校の国語教育、児童文学などにかかわり、研究会ではメンバーの報告だけでなく、外部からも伝承者などを招き、研究対象の深化拡大をはかることを試みた。

3)本年度の研究会
*前期を通じて、実践的な地域活動へ発展させることについて議論を行った。その成果として、後期に「ききみみ広場」(社文研の社会化作業部会事業)を開催することにした。これは親子を中心とする地域の人々を対象として、やはり、地域の伝承者や多様な伝承活動を行っている人々の協力を得ることによって成り立っている。11月から試みた3回の「広場」は概ね好評であり、今後の継続にも期待が寄せられている。
* 10月16日には和田 健先生(留学生センター)による報告「天体、天候に関わる伝承とその意味づけ」、11月27日には谷口幸璽(釈璽照)氏による「説教節・絵解」についての報告を得た。

4)今後の見通し
* 実践活動としての「ききみみ広場」を継続する。
* 研究会では「伝承」という観点からさらに多くの問題を取り上げ、理論的な枠組を模索してみたい。


03-40 複数簿記システムの展開と方向性

1)メンバー
代表 大塚 成男(社会変動論)
善積 康夫(社会変動論)、内山 哲彦(法経学部)、小川 真実(法経学部)
市川 紀子(博士課程)、小野 正芳(博士課程)、崔 鳳傑(博士課程)

2)活動日およびその内容
基本的には、各メンバーが個々の研究テーマに関わらせて複式簿記という記録システムが果たす役割とその意義を検討し、不定期で研究会を開いて(平成15年度中に3回)、研究成果の発表と意見交換を行った。各メンバーの具体的な研究テーマは、下記の通り。
大塚 成男:企業に対する社会的な統制での複式簿記の機能
善積 康夫:投資家へのディスクロージャーにおける複式簿記の機能
内山 哲彦:管理会計における複式簿記利用の意義
小川 真実:会計政策における複式簿記システムの活用
市川 紀子:企業会計における概念フレームワークと複式簿記
小野 正芳:複式簿記における包括利益の処理
崔 鳳傑:地方公共団体における複式簿記導入の可能性
なお、市川と小野はこのプロジェクトでの研究成果を踏まえて博士論文を完成し、今年度末に博士(経済学)を授与された。また、大塚と小野は『業績報告と包括利益』(白桃書房、2003年)の共同執筆グループに加わり、この研究プロジェクトでの研究成果の一部を公表した。さらに、崔は研究プロジェクトでの成果に基づいて自己の博士論文の作成を進め、社会文化科学研究科の全体研究会で発表した。

3)来年度に向けての課題と目標
このプロジェクトは2年間の計画であるため、来年度は各メンバーによる研究成果の取りまとめを行うとともに、共同の研究成果として複式簿記の将来像を描き出すことを課題とする。ただし、企業会計が急速な変革を遂げている現状では、複式簿記という記録システムと新たな企業会計制度との関わりについての再検討が必要となることも考えられるため、研究の進捗度に応じてプロジェクトの延長も検討する。


03-41 戦争と表象

1)参加メンバー
 代表:長田謙一(社文研)
分担者:池田忍(社文研)、上村清雄(文学研究科)、三宅晶子(社文研)、鴻野わか菜(文学研究科)、
稲本竜太郎(社文研3年)、森佳三(社文研1年)、ムジュルダール・アシュトシ(社文研1年)、冨安昭彦(社文研1年)、吉良智子(社文研1年)、山口祥平(教育学研究科2年)

2)研究の目的
 本研究は、日本を中心としつつアメリカ・インド・ドイツ・イタリア等世界諸国を視野に納めながら、20世紀における戦争とその表象の関係を総合的に研究し、その重要性に比してまだ研究蓄積が十分とはいえないこの問題領域に、実証的並びに理論的新知見を提供し、併せてそのことを通して初めて可能となる芸術概念の再検討という現代芸術学的課題に応えようとするものである。20世紀は、戦争を、規模においても質においても19世紀までとはまったく異なる次元に展開するにいたった。非戦闘員である広範な民衆を被害者としても加害責任者としても組み入れて遂行されていった20世紀の戦争は。大衆社会やメディアの発展を、高度の科学技術発展とともに、その不可欠のエレメントとしている。その中で、表象は、早くは戦争ポスター・映画報道や劇映画・各種博覧会等の形をとり、比較的新しくは湾岸戦争(やアフガニスタン爆撃)に典型的に示されたごとくテレビ映像等の姿をとって、戦争遂行上必須の手段となった。この重要性にもかかわらずこの20世紀の戦争と表象の関係に関する研究は、ようやく近年本格的研究が開始されたものである。本研究は、戦争と表象の問題を、芸術概念の再検討という角度を伴いながら領域横断的に研究するために、諸個別領域で長年にわたってこの問題に関わる研究を蓄積してきている研究者の共同組織を結成し、問題の総合的研究を可能にすることによって研究の飛躍をもたらそうとするものである。本研究は、問題をいったん<表象>という次元で捉え、美術・映画・写真・展示・デザイン等の領域を超え、多様な形態で機能するイメージを可能な限り広く問題とする見地を確保する。同時に、本研究は、20世紀の戦争と表象の関係は、広く表象の問題としてのみならず、近代における<芸術>概念の根底からする問い直しの課題をはらんでいるという自覚にたって取り組まれる。

本プロジェクトは、プロジェクト代表長田謙一が研究代表を務める平成15−16年度科学研究費・基盤研究(B)(1)「20世紀における戦争と表象/芸術―印刷・映像・プロダクツ―」と連携して取り組まれる。

3)研究の経過と成果
 本プロジェクトが連携する科研の研究例会には、本プロジェクト参加院生たちも参加し、研究討議に加わるという形態で研究を進めた。科研例会は7月・12月・3月と3回開催し、3月の例会では、本研究プロジェクトメンバーの社文研1年森佳三がイタリアファシズム期彫刻に関わる研究発表を行っている。
 科研例会とは別に、本プロジェクト独自に、15年戦争期日本の本テーマに関わる次の資料を表象分析の視点から詳細に検討し、研究討議を進めた。アサヒグラフ・MANCHUKUO・北支画巻・現代日本・NIPPON。
 そのほかは、特に初年度でもあり、プロジェクト参加者個人が、個別に研究を進めることに重点をおいて研究を進めた。


03-42 土器型式論の実践的研究

1)参加者メンバー
責任者:岡本東三
参加者:柳沢清一・池田忍、岩城克洋・松井朗(社文研博士課程)、
小林武史・松井千穂・須田亜紀・内山修三・佐藤公彦(文研修士課程)

2)研究経過
 考古学研究における土器型式論は、先史・原始時代の歴史を再構築する上での基本
的方法論である。本年度は、土器論を調査研究と参加者のテーマに関係する各時代の
土器論の問題点について検討した。
調査研究:@館山市沖ノ島遺跡の発掘調査(縄文時代早期土器)全員参加(5月)
      Aイタリア・タルキィニアの発掘調査(古代ローマ土器)岩城・松井(千)(6月〜9月)
      B北海道道東北方文化の調査(擦文・オホーツク式土器)(11月)
岡本・柳澤・内山・佐藤
個別研究:@岡本「縄文時代の曲線文の成立」
      A柳澤「擦文土器とオホーツク式土器の問題点」
      B岩城「古代ローマ時代の一般土器」
      C松井「押型文土器の編年」 
      D小林「関東・東北の弥生時代中期土器」
      E佐藤「湖西産の須恵器について」

3)本年度の成果
 本年度は個別の調査や事例発表であったが、調査概報の作成や来年度の調査の方向
性を明確にすることができた。